[II-OR16-04] 拡張型心筋症の乳児例におけるイバブラジンの有効性と安全性
Keywords:拡張型心筋症, イバブラジン, 心不全
【背景】イバブラジンは洞結節のHCNチャネルを阻害することで心拍数(HR)を低下させる.本邦では2019年に「成人におけるβ遮断薬を含む標準治療を受けている洞調律の慢性心不全」を適応として薬価収載された.米国では生後6か月以降の拡張型心筋症(DCM)に適応があり,左室駆出率の改善が報告されているが,本邦で低年齢患者への使用報告はない.今回,乳児DCM患者に対し生後6か月よりイバブラジンを導入した経験を報告する.
【症例】生後2か月の男児,頻呼吸を契機にDCMと診断した.NT-proBNP 40892pg/mL, 完全左脚ブロック,CTR 69%,LVDd 45.7mm(Z score 14.3), LVEF 19%(mSimpson)であり,PDEIII阻害薬の持続静注,利尿剤およびカルベジロール 0.01mg/kg/日,エナラプリル 0.05mg/kg/日で加療を開始した.両親は心移植を希望しなかった.エナラプリルは0.06mg/kg/日で乏尿と低血圧を呈し,0.01mg/kg/日に留めた.カルベジロールは3か月かけて0.11mg/kg/日まで漸増したが,高流量鼻カヌラ療法やジゴキシンを追加してもワクチン接種などの侵襲で心不全の急性増悪を繰り返した.生後6か月,NT-proBNP 19248pg/mL, CTR 70%, LVDd 52.2mm(Z score 14.8), LVEF 18%と上記治療では改善に乏しく,当院高難度医療管理センターの承認を得てイバブラジン 0.04mg/kg/日を導入した.開始時の安静時HR 120bpmで,2週間毎に用量調節を行った.導入後1か月,0.15mg/kg/日で症候性徐脈なく安静時HR 100bpmまで減少し,PDEIII阻害薬と利尿剤の持続静注から離脱できた.NT-pro BNP 8246pg/mL, CTR 65%, LVDd 50.2mm(Z score 13.9), LVEF 19%で,有害事象を認めなかった.
【結語】乳児DCMにおいて,安全にイバブラジンを導入し得た.
【症例】生後2か月の男児,頻呼吸を契機にDCMと診断した.NT-proBNP 40892pg/mL, 完全左脚ブロック,CTR 69%,LVDd 45.7mm(Z score 14.3), LVEF 19%(mSimpson)であり,PDEIII阻害薬の持続静注,利尿剤およびカルベジロール 0.01mg/kg/日,エナラプリル 0.05mg/kg/日で加療を開始した.両親は心移植を希望しなかった.エナラプリルは0.06mg/kg/日で乏尿と低血圧を呈し,0.01mg/kg/日に留めた.カルベジロールは3か月かけて0.11mg/kg/日まで漸増したが,高流量鼻カヌラ療法やジゴキシンを追加してもワクチン接種などの侵襲で心不全の急性増悪を繰り返した.生後6か月,NT-proBNP 19248pg/mL, CTR 70%, LVDd 52.2mm(Z score 14.8), LVEF 18%と上記治療では改善に乏しく,当院高難度医療管理センターの承認を得てイバブラジン 0.04mg/kg/日を導入した.開始時の安静時HR 120bpmで,2週間毎に用量調節を行った.導入後1か月,0.15mg/kg/日で症候性徐脈なく安静時HR 100bpmまで減少し,PDEIII阻害薬と利尿剤の持続静注から離脱できた.NT-pro BNP 8246pg/mL, CTR 65%, LVDd 50.2mm(Z score 13.9), LVEF 19%で,有害事象を認めなかった.
【結語】乳児DCMにおいて,安全にイバブラジンを導入し得た.