[II-OR17-01] iPS細胞を用いたDNM1-L遺伝子変異による心筋機能障害機序の解析
キーワード:DNM1-L, ミトコンドリア, 心筋症
【背景】DNM1-L(Dynamin-1-like protein) はミトコンドリアの分裂とマイトファジーに関連するタンパクである。我々は心筋症を発症した乳幼児2名のExome解析を行いDNM1-L遺伝子変異を同定した。これまでDNM1-L変異により心筋症を発症した症例報告は認めるが、発症機序については不明な点が多く、またヒト心筋細胞を用いた基礎研究報告はない。今回我々はDNM1-L変異による心筋機能障害の機序について解析した。【目的】DNM1-L 変異を有する2名の患者から樹立したiPS細胞を心筋細胞に分化させ、ミトコンドリア形態、ミトコンドリア機能、心筋細胞のCa2+動態、収縮能・拡張能等の機能解析を行った。【結果・考察】疾患iPS由来分化心筋細胞では著しく伸長した異常ミトコンドリア形態を呈していた。また、JC-1染色にてミトコンドリア膜電位の低下を認め、ミトコンドリア活性の低下が示唆された。OROBOROS Oxygraph-2kを用いた分析ではOCR (Oxygen Consumption Rate) の低下を認め、ミトコンドリアでのATP産生低下が考えられた。さらに細胞内Ca2+動態解析では、筋小胞体へのCa2+再取り込みを担うSERCA2 の機能指標である 50% time to decay (T50) がコントロールと比較して有意に延長していた。SERCA2 はATP依存性チャネルであり、ATP産生低下によりSERCA2の機能が低下し、Ca2+動態異常をもたらすと考えられた。また、高精度Live Cell Imaging Systemにて収縮能・拡張能の定量的解析を行い、頻拍誘発下にてiPS由来分化心筋細胞ではコントロールに比して有意に収縮能・拡張能の低下を認めた。以上の結果より、DNM1-L変異はミトコンドリアでのATP産生が低下すること、さらにはATP不足がSERCA2の機能低下をもたらしCa2+handlingを障害することが、心筋機能低下を引き起こすと考えられた。【結論】DNM1-L変異は、ミトコンドリア形態異常および機能低下とATP産生低下、Ca2+動態異常をもたらし、心筋機能障害を起こすと考えられた。