[II-OR17-02] 感染性心内膜炎患者に潜む中枢神経合併症
キーワード:感染性心内膜炎, 中枢神経合併症, 脳動脈瘤
【背景】感染性心内膜炎(IE)の中枢神経合併症は、無症候例も含めれば65~80%に認める。そのうち感染性脳動脈瘤(IIA)合併率は4~13%とされるが、破裂時の致死率は50~80%と非常に高い。JCS2017 「感染性心内膜炎予防と治療に関するガイドライン」(GL)には、中枢神経合併症の診断法でMRI・MRAの有用性が言及されているが、今回複数回のMRI・MRAでIIAを検出できず、脳出血・脳ヘルニアを呈した1例を経験した。【目的】IE患者に対する中枢神経合併症スクリーニングのアルゴリズムを考える。また中枢神経合併症の発症に影響する10mm以上の疣腫をもつ左心系自己弁IE患者に対する心臓手術介入時期を併せて検討し、神経学的予後を検討する。【対象】2002年1月~2021年12月の20年間でIE治療を行った、のべ59例(小児15例、複数回罹患例含む)を対象に診療録をもとに後方視的に検討した。【結果】全症例中、何らかの頭部画像検査を行ったのは47例(79.7%)。単純CT18例、単純MRI・MRA21例だった。一方で造影CT・CTAは8例で、そのうちスクリーニングとして実施したのは2例のみだった。無症候例も含め、中枢神経合併は24例(51.0%)。このうちIIA合併は5例(9.2%)で、未破裂動脈瘤で発見された乳児例と今回救命した学童例を除き、成人例は3例とも死亡していた。IIA死亡例は事前に微小脳出血を画像で検出していたが、造影CT・CTAは未施行だった。また10mm以上の疣腫を持つ自己弁IE患者は19例で、2週間以内に心臓手術を行ったのは3例(15.8%)、神経学的異常を認めたものは8例、死亡例は6例だった。【結語】単純MRI・MRAでの中枢神経合併症スクリーニングは有用であるが、出血例・神経学的異常例に関しては、造影CT・CTAを考慮した方が良い。またIE発症急性期の塞栓症予防目的の心臓手術に関しては、GLで比較的高い推奨レベルとなっているが、実際に実施されている症例は少数であり、急性期IE患者への手術介入の閾値の高さが伺えた。