[II-OR17-03] 冠攣縮性狭心症で発症したCOVID-19ワクチン後心筋炎の1例
キーワード:COVID-19ワクチン, 心筋炎, 冠攣縮性狭心症
【緒言】新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対するmRNAワクチンは、その有効性が確立されつつある一方で、重大な副反応の一つとして心筋炎が報告されている。10万人に1人の頻度で発症し、若年男性に多いことがあきらかになっているが、心筋炎発症の機序はまだ解明されていない。今回、COVID-19ワクチン接種後の心筋炎に冠攣縮性狭心症を合併した症例を経験したので報告する。【症例】症例は13歳男児。2回目のCOVID-19ワクチン接種の翌日早朝から間欠的な強い胸痛が出現した。胸痛時の12誘導心電図では広範囲でSTが著明に上昇し、CK 1,003 U/L、トロポニンI 15,805 ng/mLと心筋逸脱酵素が上昇していた。心臓MRIでは心外膜側遅延造影相の増強があり、COVID-19ワクチン関連心筋炎と診断した。胸痛の性状が突然発症する間欠的な胸部絞扼感で、心電図で著明なST上昇を呈したことから虚血の関与を疑い冠動脈造影検査を行った。アセチルコリン負荷試験で両側冠動脈のびまん性狭窄と一過性の完全房室ブロックが出現し、経過と合わせて冠攣縮性狭心症と診断した。ジルチアゼムの内服を開始し、経過は良好で後遺症なく退院した。【考察】COVID-19ワクチン接種後の心筋炎は、mRNAに対する自然免疫・獲得免疫の異常反応やS蛋白と自己抗原の類似性による交差反応、ポリエチレングリコールや脂質ナノ粒子などに対する免疫反応などの機序が考えられている。若年男性で頻度が高くほぼ全例で胸痛を伴うがほとんどが軽症で自然に軽快する。本症例も典型的であったが、胸痛の性状や心電図所見は虚血の関与を疑わせ、冠動脈アセチルコリン負荷で冠攣縮の所見を認めた。胸痛を伴うウイルス性心筋炎の約70%に冠攣縮が合併していたとの報告もあり、COVID-19ワクチン接種後の心筋炎と冠攣縮が関与している可能性が示唆された。