[II-OR19-05] 機能的単心室患者に対する肺血管拡張薬の有用性-肺血管拡張薬はFontan手術後の循環動態にどのような影響を与えるか-
キーワード:Fontan手術, 肺血管拡張薬, 肺血管抵抗
【背景】機能的単心室患者に対するFontan手術前からの肺血管拡張薬の有無が、その後のFontan循環に与える影響は明らかではない。【方法】2010年から2019年に当院でFontan手術を行った51例を、Fontan手術前に肺血管拡張薬を使用していなかった群 (N群;n=9)、Fontan手術前からPDE5阻害薬を内服していた群 (P群;n=26)、PDE5阻害薬とET受容体拮抗薬を併用していた群 (P+E群;n=16)の3群に分け、Fontan手術前後の心臓カテーテル検査の結果から、肺血管拡張薬内服の有無がFontan循環に与える影響を後方視的に検討した。【結果】患者の性別、主心室形態、Fontan手術前の心臓カテーテル検査時の肺血管抵抗 (PVR)、経皮的肺動脈形成術の有無、コイル塞栓術の有無は、3群間で有意差はなかった。また、Fontan手術の術式 (extracardiac or lateral tunnel)、fenestrationの有無、肺動脈形成術の有無も、3群間で有意差は認めなかった。Fontan手術後の心臓カテーテル検査時の中心静脈圧 (CVP)は、P群において他の2群よりも有意に低値であった (P群 vs N群: 10.3±0.49 vs 13.8±0.78 mmHg, p= 0.0009、P群 vs P+E群:10.3±0.49 vs 12.7± 0.72 mmHg, p= 0.0071)。また、PVRはP群においてN群よりも有意に低値であり (1.34± 0.12 vs 2.49± 0.39 units/m2, p= 0.0009)、動脈血酸素飽和度 (SaO2)はP群においてN群よりも有意に高値であった (93.8± 0.3 vs 91.7± 1.3 %, p= 0.033)。各群でのFontan手術前後のPVRの変化を比較すると、N群においてFontan手術後にPVRの有意な上昇を示したが (p= 0.025)、他の2群では有意な変化を認めなかった。なお、肺血管拡張薬の内服期間と心臓カテーテル検査結果との間に、有意な相関は見られなかった。【結語】Fontan手術前からのPDE5阻害薬の使用は、Fontan手術後の低いCVP、低いPVR、高いSaO2に関与している可能性がある。一方で、ET受容体拮抗薬との2剤併用の有用性は確認されなかった。