[II-OR20-05] 起立性調節障害と発達障害
Keywords:POTS, OD, 発達障害
【緒言】起立性調節障害(OD)の児は、20~30%に発達障害を合併するとされる。また、発達障害児に合併するOD症状には、学校生活等への不適応に伴う身体運動量減少の関与が指摘されている。今回、ODへの対応のみならず、発達障害特性を考慮した介入が症状改善に役立った症例を経験したので報告する。【症例】11歳時に、OD症状を認め当院紹介となった女児。ミドドリンとアメジニウムメチル硫酸塩を処方されたが、めまいやたちくらみが悪化し、自己中断していた。1年後に症状悪化あり再診。POTS(体位性頻脈症候群)と診断しβブロッカーを開始したが、“体に力が入らない”と感じ、内服は中断された。その後処方した苓桂朮甘湯は副作用なく内服継続できた。発達障害特性が疑われたため、児童精神科への受診を提案した。当初は本人の受診拒否の意向が強かったが、4か月後にようやく受診に同意し、抑うつ状態、身体表現性障害、ASD・HSC(Highly Sensitive Child)疑いと診断され、エスシタロプラムシュウ酸塩の内服が開始された。次第に症状は改善し、全く学校に行けない状況から、連日登校が可能となった。【考察】当院でフォロー中のODの児のうち、その4割がASD、ADHD、不安抑うつ状態、身体表現性障害、感情麻痺等の診断で、児童精神科でフォローされていた。発達障害特性を持つOD児においては、学校では問題になりにくい発達障害特性のため、その特性に気づかれにくいことも多い。OD児で発達障害特性が疑われる場合には、その特性をアセスメントし、学校や両親への適切な情報提供が有効となる可能性がある。【結語】POTSを始めとしたODにおいては一般的に、生活習慣や運動、薬物療法等の基本的治療のみでは症状の改善が乏しい。発達障害特性をもつOD児においては、もともとの学校生活への不適応を起こした原因である発達特性についての理解と配慮を促すことが、症状の改善に寄与する。