[II-OR22-01] 血漿トロンボモジュリン値から見たFontan術後の血管内皮細胞障害と血液粘性の関連
キーワード:フォンタン, トロンボモジュリン, 血管内皮機能
【背景】トロンボモジュリン(TM)はトロンビンを凝固因子から抗凝固因子に変換する糖蛋白質であり、血管内皮細胞障害のマーカーとされている。Fontan術(F術)後のTM低下は報告されるが、その機序は未だ不明である。【目的】TM値低下に寄与する因子を明らかにする。【方法】2020年9月から2021年12月までに当院にて心臓カテーテル検査を行われたF術後の症例146例を対象とした前方視的研究。カテーテル検査時に大腿動脈のPT-INR, APTT, TM, F1+2, PIC, TAT, フィブリノーゲン, d-dimerを計測した。F術後1年以内(F短期)の定期評価と術後1年以降(F遠隔期)に検査を行った群に分類し、F術適応評価時のカテーテル検査結果を含めて比較した。【結果】F短期群62例、F遠隔期群84例。検査時年齢、F術年齢、検査時体重はF短期、F遠隔期の順に3.7歳(3.2-4.5)、12.3歳(8.0-16.5)、3.2歳(2.5-3.9)、3.3歳(2.7-4.0)、13.4kg(12.2-14.9)、32.7kg(20.7-49.9)であった。TM中央値はF短期、F遠隔期の順に6.4TU/mL(5.7-7.2, 正常値3.8-13.3)、5.5TU/mL(4.5-6.8)で有意に遠隔期に低下しており、Hb、Htは順に13.5g/dL(12.8-14.4)、14.7g/dL(41.5-47.1)、40.2%(38.7-42.4)、43.6%(41.5-47.1)とF遠隔期に有意に上昇していた。SaO2、CVP、BNPに有意差はなかった。多変量解析ではTM値とF術後期間(p<0.01)、F術前のHb(p=0.08), Ht(p=0.04), BNP(p=0.03), PTINR(p<0.01)との間に有意な相関があった。【考察】F術前の血液粘性上昇やF術後BNPが血管内皮細胞障害に関連し、F術後経年的に顕在化することが示唆された。F術患者の抗凝固療法において、F術前の血液粘性も考慮する必要がある。