[II-OR23-01] 単心室房室弁置換術後の血栓弁発症に関する危険因子
Keywords:単心室, 房室弁置換, 血栓弁
【背景】近年、以下2例の単心室房室弁置換後の血栓弁症例を経験した。症例1:初回手術に体重4kgで弁置換を行い、Glenn(G)手術後に血栓弁を反復し、2度の再弁置換を要した。G術での容量負荷軽減による弁通過血流減少が血栓弁発症に寄与したと考えた。症例2:体重5kgでG術+房室弁置換を行い、術後一葉が血栓弁により閉鎖位固定した。その状態の心臓カテーテル検査でG圧、心房圧とも上昇なく、置換弁が過大であったと考えた。以上から、体格や弁通過血流に対して置換弁サイズが過大である場合に血栓弁リスクが増す可能性を考えた。【対象、方法】上記も含め血栓弁リスクを検討するため、1998-2021年に単心室房室弁置換術を行った28患者に対する再手術も含めた手術39回を、各手術に対する血栓弁の有無で比較検討した。【患者背景】主心室は右室26例(93%)(左心低形成症候群8例(29%)、内蔵錯位症候群14例(50%))、左室2例(7%)。手術年齢1歳8か月(0-20歳)、体重7.8kg(2.5-57.0kg)、置換弁サイズ21mm(16-33mm)、弁サイズ(mm)/体重(kg)比2.4(0.5~6.4)。弁置換時期はG術前8例、G術時7例、G術後Fontan(F)術前13例、F術時4例、F術後7例。【結果】血栓弁発症は39手術中12例(31%)。血栓弁症例の弁置換時期はG術前4例、G術時3例、G術後F術前5例で、F術時/F術後での血栓弁発症はなかった。血栓弁有/無で比較し、手術年齢1歳0か月(0~2歳9か月)/2歳2か月(0.2-20歳)、体重4.9kg(2.8-9.9kg)/10.2kg(2.5-57.0kg)、弁サイズ/体重比3.6(2.1-6.1)/ 2.1(0.5-6.4)、死亡率45/21%の各項目で有意差あり。弁置換から血栓弁発症までの期間は中央値187日(14-1027日)で6/12例(50%)は術後入院中に発症。【考察】低年齢、低体重での弁置換症例で血栓弁リスクが高かった。この群は体格に比して大きな機械弁が使用されており、血栓弁リスクを高めた可能性がある。半数は術後入院中の発症であり、ハイリスク例では急性期から注意を要する。