[II-OR23-03] CVPの影響を抑制した肝臓Native T1値は線維化を反映するか?
キーワード:T1mapping, FALD, CVP
【背景と目的】肝臓NativeT1(LT1)値はCVPに大きく影響されることが知られており,我々はCVPの影響を抑制したnormalized LT1(nLT1)を算出,その有用性を検討した.【方法】2021年1月から2022年2月に当院にて,Fontan手術(F術)前および後の心カテ+心臓MRIによる精査を受けた11例を対象とした.心臓MRIの心筋T1mapping撮影において同一断面に含まれる肝臓のT1緩和時間を3断面の平均値(LT1)として算出した.F術前後のLT1値および血行動態・血液生化学検査値の変化を比較し,LT1値との相関を調べた.CVPで標準化したnLT1値をCVP, LT1の相関直線から算出し,肝機能指標との相関を調べた.【結果】F術前後でLT1値(中央値588→649ms:P<0.001),CVP(2→9mmHg:<0.001),SPCF(1.28→0.69l/min・m2:0.007),PivcO2(35.6→40.1mmHg:<0.001),IVC return(1.14→1.11 l/min・m2:0.011),nFVao(41.5→31.2 ml/m2:<0.001)は有意に変化した.LT1値はCVP(R=0.52,P=0.011以下,同じ),年齢(0.51/0.013),AST(0.424/0.044),γGTP(0.589/0.003),PIC(0.549/0.018)と相関した.重回帰分析(stepwise)ではモデル1:LT1=9.839×CVP+559.87(P=0.008),モデル2:LT1=9.173×CVP-110.123×PIC+637.874(各々P=0.005/0.022)と表された.モデル1式を用いて標準化したnLT1(LT1実測値÷推定LT1値(=9.839×CVP実測値+559.87))はAST,PICと相関し,重回帰分析ではnLT1=0.86-0.165×PIC+0.006×AST(各々P=0.01/0.017)と表された.【考察】LT1値はF術後のCVP上昇に伴い延長したが,短期間で評価した2回のLT1値の差は肝線維化でなくCVPを始めとする血行動態,うっ血などの刹那的状況変化から生じたと考えられ,本研究でCVPの影響を抑制して算出したnLT1の経時的な変化からFALDの進行を予測できるかもしれない.また,PICとの相関は血管内皮機能の関与を示唆する.