[II-OR23-04] 小児期機械弁置換後の血栓弁に対するtissue-type plasminogen activator(t-PA)の使用実績
キーワード:血栓弁, 血栓溶解療法, tissue-type plasminogen activator
【背景】成人領域のガイドラインでは、血栓弁に対する血栓溶解療法が手術療法と併記でclass1の推奨となるなどエビデンスが蓄積されているが、小児領域での血栓溶解療法は症例報告が散見される程度である。【対象・方法】2008年から2021年の間に機械弁置換後に血栓弁を生じた8症例に対する計15回のt-PA投与について検討した。【結果】弁置換年齢は中央値6か月(日齢4-1歳6か月)で、大動脈弁1例、僧帽弁1例、単心室房室弁6例であった。血栓弁診断契機は外来観察中の心不全症状1例、術後急性期の血圧低下1例、残り6例は無症状で、定期外来もしくは術後入院中の超音波検査を契機に診断された。弁置換から初回t-PA投与までの期間は中央値88日(14-426日)で、初回t-PA投与前の血栓弁は、一葉閉鎖位固定+一葉開放制限(5例)、一葉のみ閉鎖位固定(1例)、二葉開放制限(2例)であった。弁葉開放制限を反復した4例で複数回t-PAを投与し、 1症例あたりの最大投与回数は4回であった。投与方法は、いずれもt-PAの投与量を0.6mg/kg/日とし、直近の連続5回は治療効果に応じて1-4日間持続投与した。それ以前の連続10回は初日に急速静注を併用して1時間で投与し、治療効果に応じて翌日以降に同量もしくは半量を追加した。投与方法によらず閉鎖位固定弁葉は全例閉鎖位のまま改善せず、開放制限弁葉は全例で可動性が改善した。重大な出血合併症は1例もなかった。t-PA治療後、2例で二葉の可動性が改善し再介入なし、一葉の閉鎖位固定が残存した6例中5例で外科的再介入し、1例は再介入不能で心不全死した。【結論】t-PAによる血栓溶解療法は閉鎖位固定弁葉には無効であったが、開放制限弁葉には有効性が高く、再手術への橋渡しの役割が大きかった。成人領域で行われる低容量持続静注によるt-PA投与は、小児領域でも同様の有効性と安全性が期待できる。当院でも直近の症例で採用し合併症なく治療効果が得られており、今後も継続する方針である。