[II-P4-1-01] アナフィラキシーショックの治療にβ遮断薬が影響を及ぼした先天性心疾患児の1例
キーワード:アナフィラキシーショック, β遮断薬, 先天性心疾患
【背景】β遮断薬内服下では、アナフィラキシーそのものが重篤化し、治療の第一選択であるアドレナリンの効果が減弱すると言われている。β遮断薬を内服中の先天性心疾患児でアナフィラキシーショックを呈し、アドレナリンへの反応が乏しかった症例を経験したので報告する。【症例】純型肺動脈閉鎖のFontan術後の6歳男児。僧帽弁狭窄と左室流出路狭窄があり、β遮断薬を内服していた。Fontan術後5年目の心臓カテーテル検査で、検査当日の朝までβ遮断薬を内服し、検査前に鎮静薬と筋弛緩薬と抗菌薬を投与した直後に、全身の紅潮と低血圧(58/32mmHg)を認め、アナフィラキシーショックの診断とした。直ちにアドレナリン筋注とステロイドの投与などを行ったが、改善に乏しく、アドレナリンは計4回の筋注を行った。しかし、低血圧が遷延したため、検査を中止し、PICUへ入室した。アドレナリンの持続静注とステロイドとH2ブロッカーと容量負荷を軸に加療を行い改善したため、第1病日に抜管し、アドレナリンの持続静注を中止した。しかし、再度低血圧を認め、カテコラミンと容量負荷を要した。また、ステロイドとH2ブロッカーは第1病日まで使用した。第2病日でPICUを退室し、第4病日に後遺症なく退院した。【考察】β遮断薬内服下では、アドレナリンの効果が減弱し、推奨投与量の2~5倍量が必要と言われている。また、アナフィラキシーショックそのもののリスクが高まるとされている。さらにH2ブロッカーもβ遮断薬のクリアランスを低下させ、効果を延長させる。本症例で内服していたβ遮断薬の半減期は約4時間程度であったが、第1病日まで低血圧が遷延しており、後方視的にアドレナリンの中止が早かった可能性とH2ブロッカーの投与が影響している可能性が考えられた。【結語】β遮断薬内服中のアナフィラキシーショックには、アドレナリンの容量やH2ブロッカーの使用に対して、慎重な対応が必要である。