[II-P4-1-04] 静脈洞弁遺残により睡眠時チアノーゼを呈した正常新生児症例の検討
キーワード:静脈洞弁遺残, 右左短絡, チアノーゼ
【背景】静脈洞弁遺残は偶然心エコーにて発見されるが、これ単独で症候性となることはほとんどない。だが出生直後には卵円孔開存(PFO)を介した右左短絡のためチアノーゼが引き起こされ、不要な医療介入を来たす症例も存在する。【症例1】41週2日、3,006g、Apgar score(AS) 5分値10点、正常経腟分娩にて出生の女児。日齢3に睡眠時にSpO2の低下を認め紹介入院となった。無呼吸や有意な呼吸休止は認めず、睡眠時に最低SpO2 85%まで低下するも速やかに回復した。心エコーでは肺高血圧はなく、心奇形の合併は無かったが、右房内に静脈洞弁遺残を認め、これが蓋をするような形で下大静脈(IVC)血流がPFOを介して左房に導かれていた。呼吸性に変動し吸気時に多くの右左短絡を認め、気相に一致してSpO2の低下を認めた。それまではSpO2低下に伴い酸素投与を行われていたが、経過観察のみとすることで経時的に軽快した。【症例2】40週6日、3,164g、AS5分値9点、正常経腟分娩にて出生の男児。日齢0より睡眠時にSpO2の低下を認めた。症例1と同様に睡眠時に最低SpO2 85%まで低下しており酸素投与が行われていた。心エコーではモザイク様の浮遊組織を認め、IVC血流はそれに沿ってPFOを介して左房に流入していた。酸素投与は中止とし、経過観察のみで経時的に軽快した。【考察】正常新生児にみられる周期性呼吸は、短時間の呼吸休止を挟むことでSpO2の低下と速やかに自己回復することで治療介入せず経過観察されることが多い。一方で呼吸休止を認めずSpO2低下をきたす症例も存在し、その中には静脈洞弁遺残が関与している可能性が考えられる。右左短絡は呼吸相や体位、体血圧の変動に影響を受けていた。IVC血流のみが右左短絡に関与しているためGlenn術後と同様な循環動態となる。正確に血行動態の評価を行うことで許容できるSpO2値を設定することができ、不要な医療介入を防ぐことができる。