[II-P4-2-06] 小児循環器仕様血管造影装置(Artis.Q.Zen)による被ばく低減の検証
Keywords:心臓カテーテル検査, 放射線被ばく, 照射線量
【背景】受光部に新素材のクリスタリンシリコンを採用したフラットパネルを用いた小児循環器仕様血管造影装置(Siemens社製,Artis.Q.Zen)は信号ノイズ低減により従来に比し超低線量においても構造描出が維持され,大幅な被ばく低減を期待できるとされる.【目的】同装置導入後に従来機(同社製,Artis.dBC)と線量を比較し,実臨床において被ばくが低減されたか明らかにする.【対象・方法】2020年1月から2021年12月まで北海道立子ども総合医療・療育センターで心臓カテーテル検査を受けた346例(男172例).2021年5月のQ.Zen導入前後の2群において透視時間(FT,分),最大皮膚照射線量(MSD,mGy)およびMSD/FT(mGy/分)を比較し導入前群vs導入後群で示した.検討は正規性を検討し必要な連続変数は対数変換後にt-検定を用いてp<0.05を有意とした.【結果】導入前群240例(年齢0日~28歳,中央値2.3歳),導入後群106例(年齢15日~34歳,中央値3.6歳).FTは中央値10.5(2.7-76.6)分vs12.7(5.4-49.4)分,MSDは中央値23.3(3.6-1532)mGy vs 21.0(3.0-483)mGyでいずれも有意差はなかった.MSD/FTは中央値0.8(0.4-1.2)mGy/分vs 0.7(0.3-1.1)mGy/分(対数変換後のt-検定でp<0.0001)で有意に低値であった.1歳未満(71vs22例),1~9歳(114vs59例),10歳以上(55vs25例)で分けると,3群全てでMSD/FTは有意に低下し(p<0.0001),加えて1~9歳ではFTが短縮(p=0.004),10歳以上ではMSDが低下していた(p=0.002).【考察】定量化は出来ないが明らかな画質の向上に関わらず,透視時間に有意差はなかった.透視時間は術者の練度など画質以外の要因が大きく関与すると考えられる.しかしQ.Zen導入後に透視時間当たりの線量は有意に低下しており実臨床においても被ばくを低減していることがわかった.撮像条件の調整で更なる被ばく低減を目指したい.