[II-P4-3-07] 開心術後の難治性乳び胸に対する当院での治療戦略
キーワード:胸膜癒着, 難治性乳び胸, 開心術後
(目的)開心術後の乳び胸は、非常に難渋する事があり、致命的な合併症となりうる。以前より種々の対策が取られており、なかなかゴールデンスタンダートと言える方法は決まっていない。今回は当院での難治例に焦点をあてて、現在の我々が取っている対応法を提示する。(症例)当院における小児心臓手術症例は 過去2年間で104件であり、その中で乳び胸は11件あり、21trisomy・Noonan症候群等の遺伝子疾患症例、新生児症例、Norwood+Glenn術後であった。その中でも特に治療に難渋した4件を中心に、当院での治療戦略を報告する。(治療法)術前から遺伝子学的もしくは術式から乳び胸の高リスクに当たる症例は、術後のミルク摂取をPOD2以降とし、開始時はMCTミルクとしている。MCTミルク摂取後にドレーン排液が増加した場合、サンドスタチンとフィブロガミンの投与を開始する。一度増加したドレーン排液はMCTミルクを継続すると減らない事が多く、この時点で一度TPNに移行する。それでも減少が見られない場合は、ドレーンから自己血を注入し胸膜癒着を試みる。自己血による胸膜癒着は、従来のピシバニールによる胸膜癒着と比較して発熱・疼痛といった副反応が少なく、鎮静もそれほど強くかけなくても行う事が出来る。自己血による胸膜癒着で排液減少乏しい時は、自己血+トロンビン注入に切り替える。こちらは自己血のみよりも副反応は強いが、ピシバニールよりも軽い。自己血+トロンビンは自己血単独と比較して効果に期待できる。これでも排液減少が乏しい時は、ピシバニールを注入している。なお、治療中は原則として絶食を継続している。この方針ですべての乳び胸は完治しており、死亡症例はない状況である。(結語)開心術後の難治性乳び胸に対して、ピシバニール注入より副反応が少ない、自己血注入による胸膜癒着療法を併用する方法は有効であると思われる。