[II-P4-4-08] 小児多系統炎症性症候群と川崎病症例におけるサイトカイン動態の検討
Keywords:サイトカイン, 小児多系統炎症性症候群, 川崎病
【背景】我々は、小児多系統炎症性症候群(MIS-C)の1例の経時的な血清を用いて多項目のサイトカイン動態解析を行い、昨年の本学会において1)治療開始前に減少に転じるもの、2)治療後解熱とともに速やかに低下するもの、3)解熱後徐々に低下するものに分類し、臨床経過に伴い変動する項目を報告した。【目的】本研究では、MIS-Cと川崎病(KD)症例におけるサイトカイン動態およびプロファイルを比較することで、病態・鑑別・治療に資する知見を得ることを目的とした。【方法】国立国際医療研究センター病院小児科で、MIS-CあるいはKDとして治療した児の経時的な血清を保存し、BioPlex 3Dシステムを用いて68種類、CLEIA法でIFNλ3を測定した。【結果】症例の内訳はMIS-C2例とKD5例。初期治療はMIS-C2例はIVIG+PSL+ASA、KDはIVIG+PSL+ASAが3例、IVIG+ASAが2例であり、MIS-C1例とKD3例では追加治療を要した。治療開始前のピーク値がKDでMIS-Cより高値の傾向があるものはCCL5、CCL27、MIS-CでKDより高値の傾向があるものはGM-CSF、CXCL9、CXCL10、CXCL11、IFNγ、CX3CL1、CXCL6、IL6、IL10、CCL20、TNFα、IL-12(p40)、IL-1ra等であった。【考察】MIS-CとKDは類似の症状を呈する一方で、発症年齢や人種差、腹部症状や心筋障害の頻度が異なる。本研究では、治療開始前のサイトカインプロファイルにも違いを認めた。治療後の解熱に伴い速やかに低下する項目は両者とも同様であった。初期治療でPSLを併用したが追加治療を要した症例(MIS-C1例、KD2例)では解熱の有無に関わらずPSL開始後のIL-6は十分低下がみられているため、これらの症例で追加治療を要した場合生物学的製剤の選択としてIL-6阻害薬であるトシリズマブの優先順位は低いと考えられた。【結論】サイトカイン動態やプロファイルの検討は有用であり、診断・病態解明、追加治療の薬剤選択に資するマーカーの検証を目的に、現在多施設共同研究で症例集積中である。