[II-P4-5-02] 遠隔期に無症候性に冠動脈の3枝狭窄病変を認めた川崎病性巨大冠動脈瘤の1例
キーワード:川崎病, 冠動脈瘤, 遠隔期
【背景】川崎病性冠動脈瘤では無症候性に狭窄が進行することは稀では無い。遠隔期に無症候性の冠動脈3枝病変をきたした川崎病性巨大冠動脈瘤の症例を経験したので報告する。【症例】19歳男性。3歳8か月時に川崎病と診断された。退院時の時点で右冠動脈(RCA)は14mmの瘤とソーセージ様拡張、左冠動脈主幹部(LMT)から左前下行枝(LAD)にかけて14mmおよび左回旋枝(LCX)に8mmの巨大冠動脈瘤を認め、入院中からアスピリンとワーファリンによる抗凝固療法とレニベースによる血圧コントロールを開始した。発症1年後の心臓カテーテル検査でRCA起始部の完全閉塞とLCXからSeg2への側副血行路を認めた。その後も定期的に心臓カテーテル検査やトレッドミル負荷試験、心臓MRI、冠動脈CT、運動負荷心筋シンチを行っているがこれらでは新規の虚血の所見は無く、本人の自覚症状も無く経過していた。発症後15年の心臓カテーテル検査を行ったところ、Seg2の閉塞、LADの99%狭窄およびLCXの75%狭窄を認めた。多枝にわたる高度閉塞性病変、LADの高度閉塞性病変であり冠動脈バイパス術の方針とした。【考察】川崎病性冠動脈瘤の症例では遠隔期においても冠動脈のリモデリングが長期にわたり継続している。また、川崎病性冠動脈瘤の場合には側副血行路が発達することが知られている。本症例のように側副血行路により血流が保たれているため無症候な症例は川崎病性冠動脈瘤に特徴的と考えられる。側副血行路の起始部に冠動脈瘤がある場合には同部位の狭窄により、重篤な虚血が出現する危険性があると考えられる。【結論】症状や所見が無くても定期的に冠動脈の形態的評価を行う事が巨大冠動脈瘤を複数認めた症例では重要であると考えられた。