[II-P4-5-03] 免疫グロブリン10%製剤導入による、山口県の川崎病治療プロトコールへの影響
Keywords:川崎病, グロブリン製剤, 冠動脈病変
【背景】山口県下では川崎病の初回治療,追加治療はIVIG 2 g/kgと抗血小板薬で行うこととしている.グロブリン製剤の選択や投与速度については,規定されていない.近年IVIGに使用されるようになってきたグロブリン10%製剤では,冠動脈病変(CAL)発症は5%製剤と比較して差がないとされるが,一方で早期の解熱が得られるとする報告もある.我々の治療プロトコールに10%製剤が与える影響について,検証した.【方法】2018年1月-2021年12月までの期間に当院に入院した川崎病患児を対象とした.後方視的にカルテより,臨床経過,グロブリン製剤の種類や投与にかけた時間などの情報を収集した.初回IVIG 2 g/kgを実施した症例を解析対象とし,5%製剤を用いた群と10%製剤を用いた群で比較した.【結果】134例を解析対象とし,月齢の中央値は26か月,男:女比 72:62であった。初回IVIGとして用いたのは5%製剤89例,10%製剤45例であった.両群間で月齢,男女比,初回IVIG実施病日,白血球数,CRP値や群馬スコアで差は認めなかった.IVIGの投与時間は10%製剤で有意に短かったものの(12.4±2.9時間 vs 22.5±5.2時間; p<0.001),入院期間(10.0±2.7日間vs10.6±3.6日間)には差は認めなかった.CALの発症率(6.7% vs 1.1%; p=0.110)や追加IVIGが必要となった割合(28.9% vs 23.6%; p=0.533)でも両群間に差はなかった.初回IVIGから追加IVIG投与開始までの時間を比較すると10%製剤使用群でやや短かったが,有意差は認めなかった(63±20.9時間 vs 85.0±78.3時間; p=0.527).【考察】IVIG投与に必要な時間は10%製剤で有意に短縮しており,追加治療が必要な場合も5%製剤より早いタイミングで追加IVIGを実施する傾向にあった.一方で,入院期間やCAL発症に製剤間で差はなく,プロトコールへの影響は限定的であった.治療抵抗性が予測される場合,グロブリン製剤の選択と投与速度を慎重に検討する必要がある.