[II-P4-5-06] 川崎病発症と新型コロナウイルス感染症(COVID-19)との関連の検討
Keywords:川崎病, COVID-19, 新型コロナウイルス
【背景】新型コロナウイルス感染後に、川崎病類似の症状を呈する小児多系統炎症性症候群(MIS-C/PIMS)を発症する症例があることは知られているが、典型的川崎病の発症とSARS-CoV-2感染が関連するかは不明である。【目的】COVID-19流行開始以降に発症した川崎病患者の血中SARS-CoV-2抗体を測定し、先行感染の有無と頻度を検証すること。【方法】名古屋大学小児科と関連施設において、2020年4月-2021年12月に川崎病の診断で加療を行った患者に対し、治療開始前と第10-14病日の2点で、SARS-CoV-2 IgM測定試薬(富士レビオ社)とElecsys Anti-SARS-CoV-2(ロシュ・ダイアグノスティックス株式会社)を用い血中抗体価を測定した。【結果】50例から研究同意を得て、過去にγグロブリン投与を受けた再発例、検体量不足で抗体測定を行えなかった5例を除外した。男女比は25:20、年齢の中央値は1.75歳(0.25-7.75)、体重の中央値は11.0kg(6.1-27.2)、診断病日の中央値は4病日(1-12)であった。MIS-Cで低値を示す傾向があるとされる血小板数の中央値は33.2万/μl(11.5-60.5)、リンパ球数の中央値は2826/μl(765-9639)で、血小板数15万/μl未満の症例、リンパ球数1000/μl未満の症例は3例ずつであった。経過中カテコラミン投与を要する心不全・ショックを呈した症例はなかった。1例を除きγグロブリン静注療法が行われ、1例で初期PSL併用を行い、発症後4週時点で冠動脈瘤を呈した症例はなかった。血中抗体価については、SARS-CoV-2 IgMがCut Off Index:1.0-2.0と僅かに上昇(カットオフ値1.0未満)を示した症例が治療前に4例、治療後に2例あったが、Elecsys Anti-SARS-CoV-2は治療前後とも全例陰性であった。【考察・結論】COVID-19流行第5波までに診療を行った川崎病患者の中には、発症前数週間以内のSARS-CoV-2感染を疑う症例はみられなかった。これより、本邦の川崎病発症とCOVID-19の関連性は低いことが示唆された。