[II-P4-5-08] COVID-19罹患から4週後に発症し、炎症反応の陰性化までに9週間を要した小児多系統炎症性症候群の5歳男児例
キーワード:MIS-C, 川崎病, 炎症反応の遷延
【背景】COVID-19関連の小児多系統炎症性症候群(MIS-C)症例が国内外から相次いで報告されている。しかし急性期以降の炎症マーカーの推移や、退院後の管理については一定の見解がない。【症例】発熱4日目、反復する嘔吐および頚部リンパ節腫脹を認め、当院に紹介受診した5歳7か月男児。初診時に川崎病主要症状5/6項目を満たし、加療目的に入院した。問診で入院4週間前に家族でCOVID-19罹患歴があることが判明。濃厚接触後に発熱(1日のみ)を認め、PCR検査で陽性となったが、自宅療養にて改善した。入院時のSARS-CoV-2PCRは陰性だったが、後に抗体価の上昇を確認しMIS-Cの診断基準も満たした。急性期に一過性の心収縮低下を認めたが、ショック病態は呈さず心筋逸脱酵素やBNP値も軽度の上昇に留まった。小林スコアは6点であり、川崎病急性期の治療としてIVIG 2g/kg+ASA内服およびPSL 2mg/kg/day併用にて治療し、症状は回復した。心エコーで心収縮の改善等も確認し、第17病日に退院した。退院時のCRPは陰性であり、その後も発熱・症状再燃・感冒等はなかったが、退院後初回(第26病日)の外来でCRP 0.28mg/dLと微増あり、第36病日には1.76mg/dLまで上昇した。心エコーでは心収縮良好で、冠動脈病変を含め有意な所見なく、ASAを30mg/kg/dayに再増量して経過をみた。 その後もCRPの微増減を認めたが、ASA内服量を調整し、第67病日(治療開始から9週後)に陰性化した。ASA内服は合計3か月間で終了したが、CRPの再上昇は認めなかった。【考察】MIS-C急性期における炎症性サイトカイン動態についての報告は散見されるが、回復期までを含めた経時的な変化については未だ詳細不明である。本例ではCRP弱陽性の遷延に対し、ASA増量にて対応し後遺症なく治癒したが、その必要性や有効性についてはエビデンスがない。【結語】MIS-Cの病態解明や亜急性期~回復期における管理方針の確立に向けて、さらなる症例の蓄積と研究が必要である。