[II-P4-5-09] 日本における小児多系統炎症症候群 (MIS-C) 診療の問題点ー川崎病診断基準を満たすMIS-Cと満たさないMIS-Cからの考察
キーワード:川崎病, 小児多系統炎症症候群, 診断基準
【背景】小児多系統炎症症候群 (MIS-C)はCOVID-19流行に伴い、新たに定義された疾患で、川崎病 (KD)症状を呈する症例がある。MIS-C自験例のうち、KD診断基準を満たす例と満たさない例から、日本におけるMIS-C診療の注意点を考察する。【症例1】11歳男児。COVID-19罹患の約1ヶ月後に発熱、腹痛下痢、眼症状を訴え、発症9日目に入院した。KD主要症状 3/6と診断基準を満たさず。心不全マーカー上昇、LVEF 48%と心機能障害、凝固異常を認めMIS-Cと診断した。IVIG 2 g/kg、ヘパリン持続投与 200 U/kg/dayにより心後遺症なく軽快した。【症例2】5歳男児。COVID-19罹患の約1ヶ月後に発熱、腹痛嘔吐、頚部痛を訴え、発症4日目に入院した。KD主要症状 6/6 (群馬スコア 5点:IVIG不応高リスク群)と診断基準を満たし、同時に心不全マーカー上昇、LVEF 50%と心機能障害、凝固異常も認め、MIS-Cの診断基準も満たした。IVIG 2 g/kg、アスピリン 30 mg/kg、ヘパリン持続投与 200 U/kg/dayにより心後遺症なく軽快した。【考察・結論】症例1は、KD診断基準を満たさず、MIS-Cの診断・治療までに時間を要した。症例2は、KD診断基準を満たした事が、早期受診・治療につながった。2症例とも、検査所見は類似していたが、KD症状の有無は、医療機関へのアクセス・治療タイミングに影響を与えた可能性がある。また、KDが多い日本において、KD/MIS-Cの診断基準を同時に満たす症例 (症例2)は潜在的に存在し、小児COVID-19の爆発的増加に伴って診断・治療に苦慮する症例が増加する可能性がある。KD治療にあたり、COVID-19に関連した丁寧な問診に加え、心機能障害や凝固異常の確認は必須である。今後、サイトカイン等の測定により病態の相違を検討すると共に、KD疫学情報とこれから行うMIS-C全国調査結果を交え、MIS-C治療における日本独自の問題点について考察する。