[II-P4-6-05] 高齢者の修正大血管転位症における三尖弁閉鎖不全症に対して三尖弁置換術および心室再同期療法を行った2症例
キーワード:成人先天性心疾患, 修正大血管転位症, 三尖弁置換術
【背景】修正大血管転位症(ccTGA)の三尖弁閉鎖不全症(TR)については、手術適応や治療方針について明確な基準はない。心室中隔欠損症や肺動脈弁狭窄症を合併しないccTGAは比較的高齢まで自覚症状なく経過し、TRにより心不全症状を生じる。しかし三尖弁置換術は体循環右室機能が低下した症例に関して予後不良とされる。【目的】修正大血管転位症{S,L,L}の三尖弁閉鎖不全症で心不全増悪時の体循環右室機能40%以下の症例に対して、心不全コントロール後に外科的治療介入を行った2例を報告する。【症例】症例1:年齢73歳、女性。31歳に肥大型心筋症、cAf、cAVBの診断で永久的ペースメーカを留置された。60歳時に心不全を発症しccTGAを指摘、内科的に心不全コントロールされた。その後も心不全増悪を繰り返し、内科的治療の限界と判断され当科紹介となった。入院時心エコー検査では体循環右室機能EF31.7%、TR moderate、MR moderateであった。手術はTVR(CEP25mm)+MVP+CRT植込みを行った。術後心不全コントロールと感染症治療に難渋したが、術後161日目にリハビリ転院となった。術1年後に心室性不整脈を生じ死亡した。症例2:年齢71歳、男性。37歳時に合併心奇形を伴わない修正大血管転位症の診断となった。経過フォロ-中にPaf、TRの増悪を認め、手術を検討されたが希望されなかった。71歳時に労作時呼吸困難が増悪し、NYHA4で当院循環器内科へ入院となった。入院時心エコー検査で右室機能体循環右室機能EF38.9%、TR severeを認めた。カテコラミン投与、ARNI等を用いた心不全コントロールを行った後にTVR(SJM29mm)+full maze+CRT植込み術を施行した。術後経過は良好であり、心不全コントロールに難渋せず術後20日目に自宅退院となった。【結語】ccTGAにおける体循環右室機能の低下した症例の予後は不良とされるが、ARNI等の新規心不全治療薬、有効なCRT植込みが心不全コントロールの一助になると考えられた。