The 58th Annual Meeting of Japanese Society of Pediatric Cardiology and Cardiac Surgery

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ポスター発表

成人先天性心疾患

ポスター発表(II-P4-6)
成人先天性心疾患 III

Fri. Jul 22, 2022 3:30 PM - 4:30 PM ポスター会場

座長:島田 衣里子(東京女子医科大学 循環器小児・成人先天性心疾患科)
座長:田中 靖彦(静岡県立こども病院 循環器科)

[II-P4-6-07] 無治療PA-VSDの高齢者に対する大動脈弁置換の一治験例

長谷川 広樹1, 倉石 建治2, 西原 栄起2, 太田 宇哉2 (1.大垣市民病院 心臓外科, 2.大垣市民病院 第2小児科)

Keywords:無治療PA-VSD, 大動脈弁置換, 側副血行路

無治療PA-VSDの高齢者に,大動脈弁置換を施行した症例を経験した.文献的考察を加えて,供覧する.【症例】59歳 女性,身長 161cm 体重 54.2kg.SPO2 70-74%.PA-VSDに対しては無治療.55歳頃から大動脈弁狭窄を認め,増悪傾向であった.喀血も増悪傾向で,58歳時に喀血のため入院治療を要した.59歳時,著明な下腿浮腫のため,入院となったが,内科的治療の効果は乏しく,大動脈弁への介入を要した.手術リスクは高く, TAVIを検討したが,不適とされ,大動脈弁置換の方針とした.【手術】上下大静脈脱血,左室ベントとし,さらに右房から右室に脱血管を留置した.大動脈弁尖はいずれも著明な石灰化で癒合し,開口部は中央の小さな裂隙のみであった.弁尖切除後,左室からの血液流出により視野不良となった.体温を25度まで下げ,一時的に循環停止とした.弁輪の石灰化も著明で,切除に時間を要するため,CRCPによる循環停止とした.弁輪へ糸をかけた後,循環再開.23mmのOnX弁を縫着した.人工心肺離脱は容易.術後経過良好で,術後20日に退院となった.【考察】周術時のリスクが高く,年齢の問題はあるが,可能であればTAVIが良い選択であった.手術となれば,左心系への大量の血液還流の対策が必要となる.バルーンによるMAPCAの遮断が有効と思われるが,アクセスルートの石灰化や,バルーン位置固定の不安定性を危惧し,施行しなかった.右室ベントは,全体の還流量には対応できていたが,大動脈弁直下のVSDから直接血液が流出するため,視野確保の面では無効であった.心房中隔から左房への脱血管留置が有効である可能性がある.人工弁については,術後も喀血により抗凝固が困難になることが予想され,より抗凝固にすぐれるOnXを使用した.これにより抗凝固療法は最低限とでき,またやむなく抗凝固を中止せざるを得なくなっても,血栓を回避できる可能性が高くなると思われる.