[II-P4-6-10] 低酸素血症を伴った先天性右室憩室の1例
キーワード:憩室, 右室二腔, 新生児
【背景】右室憩室は心室憩室の中でも非常に稀な疾患で、他の先天性心疾患に合併することがほとんどで心疾患に対する検査や手術時に偶然発見されることが多い。今回我々は、右室二腔症の出生前診断を契機に先天性右室憩室と診断した新生児例を経験した。【症例】日齢0、男児。妊娠経過で胎児心疾患を指摘され、右室二腔症、肺動脈弁狭窄と出生前診断された。在胎38週4日に誘発分娩で、3,194 gで出生した。Apgarスコア 7/8 点 (1/5分値)で仮死なく出生し、SpO2 89 %だった。心エコーで右室は体部で二分され、二腔間は層流で圧較差はなかったため右室二腔症ではなく右室憩室と診断した。四腔断面像で憩室を除いた右室は低形成で、肺動脈弁輪径 4.6 mm(60%N)と小さいが、狭窄なく順行性の血流を認め、卵円孔は右左短絡だった。酸素療法により低酸素血症は改善し在宅酸素を導入後、日齢16に退院した。3か月時の心臓MRIで憩室を除いた右室拡張末期容量(RVEDV) 6.2 mL(19.2 mL/m2)、右室心係数(RVCI) 1.50 L/min/m2、右室駆出率(RVEF) 51%で憩室を含めたRVEDV 15.5 mL(47.9mL/m2)、RVCI 4.44 L/min/m2、RVEF 60%だった。心臓カテーテル検査で憩室は収縮しており、筋性憩室で右心系の駆出に関与していると考え温存し経過観察中である。【考察】右室憩室の病態形成は初期発生段階の心筋形成の異常と考えられているがetiologyは未だ不明である。出生前診断の進歩により本疾患の発見される頻度は増加すると考えられる。憩室が心不全や不整脈の原因である場合は手術適応がある。本症例は低酸素血症を呈する右室低形成を伴った右室憩室で右室と同期した有効な収縮があると判断し、憩室は切除せず酸素療法を継続している。今後も右室と憩室の容積および収縮能を評価しながら心不全や不整脈に注意し慎重な経過観察が必要である。