[II-P4-7-01] 胸痛で救急搬送され左冠動脈右冠動脈洞起始症と診断した11歳男児
キーワード:冠動脈起始異常, 胸痛, 突然死
背景:左冠動脈右冠動脈洞起始症は稀な疾患であるが、若年者の突然死の原因となる冠動脈起始異常であり、早期診断が極めて重要である。症例:基礎疾患のない11歳男児。これまで運動時に胸痛を自覚することはあったが、安静で改善するため相談せず経過。昼休みに鬼ごっこをして遊んでいた際(13時15分)に激しい胸痛を自覚し、当院救急搬送。来院時(13時50分)に胸痛は改善傾向であったが、心電図でV1-V4誘導の陰性T波及びV1-V5誘導のST低下(最大0.5mV)を認め、小児循環器科コンサルト。血液検査でCK-MB 9 U/L, troponin I 0.03ng/mLと心筋逸脱酵素上昇なし。心エコーで心収縮力は保たれていたが、左冠動脈の正常起始が確認できず大血管間を走行している可能性が疑われたため、造影CT検査を評価し左冠動脈右冠動脈洞起始症と診断。同日夜間(21時37分)にも軽度胸痛の訴えあり。その際の血液検査でCK-MB 58 U/L, troponin I 10.32ng/mLと心筋逸脱酵素上昇を認めたが、心電図でST-T変化は正常化しており、日中のイベントを反映した採血結果と判断。その後は胸痛の訴えなく、心筋逸脱酵素も緩やかに正常化。入院翌日よりCaブロッカー及びアスピリン内服を開始し、本人・家族・学校に対して十分な病気の説明と生活指導(運動全面禁止、登下校の車送迎、胸痛時のニトログリセリン舌下対応など)、BLS指導を行った上で一旦退院。現在外来フォローしながら、近日中の外科治療を計画中である。考察:早期診断が重要な疾患であり、若年者の胸痛を診た際は本疾患を念頭に心エコーを評価し、疑わしい場合は造影CTなどの画像検査を積極的に行う必要がある。また、胸痛からあまり時間が経っていないと、心筋逸脱酵素が偽陰性となり虚血を見逃す可能性がある。本症例では再度胸痛の訴えがあったが、胸痛が継続していなくても確認のため再度採血してみる必要がある。