[II-P4-7-02] 心原性ショックを契機に診断され異なる転帰を辿った先天性冠動脈異常の2例
キーワード:冠動脈, 冠動脈起始異常, 突然死
【背景】先天性冠動脈異常の頻度は1%であるが、初発の心イベントが死亡に至る可能性がある。また無症状での診断は稀で、診断後の治療や管理の選択も重要となる。【症例1】4歳女児。3歳時に運動後の意識障害にて救急搬送されECMOを導入。急性心筋炎として治療されるも改善なく、第6病日に左冠動脈右冠動脈洞起始の診断に至ったものの有意な狭窄病変は認めなかった。一旦ECMO離脱したが心機能維持できずECMO再導入。第13病日の造影CTにてLMTの壁内走行を確認し、翌日冠動脈再建術(LMT-unroofing)施行。しかし術後も心機能改善なくECMO離脱困難のため第31日病日に当院転院。Temporary LVADへ装着し心臓移植適応登録後、EXCORへ変更。LVAD装着後1ヶ月時に左前頭葉のSAHを認めたが、出血の拡大なく神経学的後遺症は認めなかった。現在装着後600日以上経過するが心機能回復なく不可逆性虚血性心筋症として移植待機を継続している。【症例2】14歳男児。サッカー中にVFとなり、クラブメンバーの迅速な胸部圧迫とAED装着により心拍再開、意識回復した状態で前医に救急搬送。搬送後の心電図ではQT延長(Friderisia補正 QTc510ms HR60bpm)を認めたものの、明らかな家族歴なく、現在LQT関連遺伝子検査を施行中である。同時に造影CTにて単一冠動脈(Lipton分類R2B)、LMTの壁内走行を認めた。安静及び着用型自動除細動器にて待機しながら手術目的に当院へ転院。冠動脈再建術(LMT-unroofing)を施行し、術後経過は良好である。【考察】先天性冠動脈異常は診断が困難であり運動負荷テストでも同定する事ができないことがある。このため運動時の意識消失発作は、冠動脈疾患の可能性を考慮し造影CT撮像が望まれる。2例とも心イベントを契機に診断に至ったが、症例1では心筋炎や心筋症の鑑別、症例2ではLQT症候群の鑑別を必要とし診断に時間を要した。また冠動脈再建術後も一部壁内走行は残存するため運動制限の決定も今後の難しい問題である。