[II-P4-7-03] 当院で経験した左冠動脈肺動脈起始の臨床経過
キーワード:左冠動脈肺動脈起始, 拡張型心筋症, 心エコー
【はじめに】左冠動脈肺動脈起始(ALCAPA)は30万出生に1例と稀な疾患である。自然経過では重症心不全を来し、生後1年以内に多くは死亡し、見逃してはいけない疾患であるが、確定診断には難渋するケースも多くある。今回当院で手術を行ったALCAPAの症例の診断から術後までの臨床経過を報告する。【対象】当院にて2006年1月から2021年12月までの15年間に手術を行ったALCAPAの12例を対象に診療録を元に術前、術後の臨床経過を検討した。【結果】性別は男4例、女8例と女児が多かった。手術時年齢は1ヶ月から1歳までの乳児期が11例、3歳3ヶ月の幼児期1例であった。全例当院へは紹介受診であり、当院へ紹介されるまでに2カ所以上の病院を経ている例が9例であった。このうち最初の病院でALCAPAと診断されている例はなかったが全例心エコーは施行されていた。ALCAPAと診断されて当院へ紹介された例は全例、小児循環器科医からの紹介であった。前医初診時の主訴は心雑音6例、体重増加不良が5例、感冒症状が1例だった。当院受診時、正常径の120%以上の左室拡張期末期径を認める例が10例あり、中等度以上の僧帽弁閉鎖不全を伴う例が6例あった。術中僧帽弁に介入した例は1例あった。術後1年の時点で左室拡張期末期径が正常の120%以下に改善している例が9例であった。術後に死亡例はなしで経過は良好であった。【結語】ALCAPAは診断に難渋し、特に小児循環器医不在の病院では診断率が低かった。乳児期の心拡大、心不全症状を診た際はALCAPAの検索を行うことの重要性、適切な治療を行えば良好な経過となることが改めて示された。