[II-P4-7-08] 大動脈弁狭窄後拡張による左冠動脈拡張の一例
Keywords:Coronary artery dilatation, Aortic valve stenosis, poststenotic dilatation
【背景】弁狭窄の狭窄後拡張で,肺動脈や上行大動脈が拡張することは一般的によく知られている.今回,単尖形態の偏向性の通過血流を持つ大動脈弁狭窄症例で左冠動脈拡張を伴った症例を経験したので報告する.【症例】症例は3歳女児.出生後の心雑音から大動脈弁狭窄の診断となり,進行傾向が見られたため生後4か月時に当科紹介となった.初診時心エコー検査で,大動脈弁は左右二尖で前方交連が癒合していたため,単尖弁と診断した.狭窄は中等度で,弁逆流はみられず,壁運動も良好であった.この時から左冠動脈主幹部=3.7mm(Zスコア=6.2)と拡張を認めていた.その後,1歳前頃から大動脈弁狭窄および左冠動脈主幹部=5.3mm(Zスコア=8.7)と拡張が進行したため,大動脈弁狭窄の評価を含め,心臓カテーテル検査を実施した.なお,1歳時に川崎病に罹患したが,罹患前後で冠動脈径の変化はみられなかった.狭窄の圧格差は50mmHg程度で,弁及びSTjunction部位での形態的な狭窄を認めた.また冠動脈は左冠動脈主幹部=5.2mm(Zスコア=8.0)と拡張がみられた.同時に施行したエコー検査では,大動脈弁狭窄の偏向性の通過血流が左側のSTjunction付近にあたり,収縮期に左冠動脈に流入していた.狭窄は手術適応と判断し2歳時に一部心膜補填を用いた大動脈弁形成および基部拡大術を行った.狭窄解除後,左冠動脈主幹部は退縮傾向がみられた.3歳時に冠動脈造影を再検し,左冠動脈主幹部=3.4mm(Zスコア=3.9)であった.【結語】大動脈弁狭窄による上行大動脈の狭窄後拡張の報告は多いが,本症例のように冠動脈拡張をきたす症例は稀である.偏向性血流や基部狭窄を認める症例では,同様の冠動脈拡張をきたす可能性があり,注意が必要と思われる.