第58回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

ポスター発表

川崎病・冠動脈・血管

ポスター発表(II-P4-7)
川崎病・冠動脈・血管 III

2022年7月22日(金) 15:30 〜 16:30 ポスター会場

座長:市橋 光(自治医科大学附属さいたま医療センター 小児科)
座長:沼野 藤人(新潟大学医歯学総合病院 小児科)

[II-P4-7-09] 体重増加不良の経過観察中に右冠動脈肺動脈起始(anomalous right coronary artery from the pulmonary artery:ARCAPA)と診断した1例

江口 太助1, 塩川 直宏2, 森田 康子2, 櫨木 大佑2, 野村 裕一2, 緒方 裕樹3, 松葉 智之3 (1.霧島市立医師会医療センター 小児科, 2.鹿児島市立病院 小児科, 3.鹿児島市立病院 心臓血管外科)

キーワード:右冠動脈肺動脈起始, 体重増加不良, 心臓超音波検査

【背景】右冠動脈肺動脈起始(ARCAPA)は非常に稀な先天性心疾患であり,今回,体重増加不良の経過観察中に心精査の心臓超音波検査で発見された女児を経験した.【症例】1歳3か月,女児本症例は体重増加不良を主訴に当科を紹介受診した.出生時の異常はなく,先天性代謝異常スクリーニングは正常だった.生後1か月検診では,1日の平均体重増加は42 g/日で診察所見も異常はなかった.生後3か月検診で体重増加不良を指摘され,生後5か月に当科を紹介受診した.当科初診時の身長は60.4 cm ( -1.8 SD), 体重は5,326 g ( -2.0 SD)だった.診察所見に異常がなかったので経過観察の方針になった.経過観察中,心精査のため心臓超音波検査を行った.心臓超音波検査では,左室拡張末期径 26.7mm(100% of normal),駆出率 80%と左室の拡張もなく壁運動も良好だった.左冠動脈は正常起始で左冠動脈主幹部は+2.36 SDとやや太く順行性の血流だった.右冠動脈の起始部は右バルサルバ洞にはなく左方に伸びており逆行性の血流だった.カラードップラーで心室中隔に複数の血流を認めた.後にその血流は左冠動脈から右冠動脈への側副血行路と分かった.心臓CTで右冠動脈が主肺動脈から起始しており診断を確定した。心臓カテーテル検査による左冠動脈造影では左冠動脈から右冠動脈に流れ逆行性に主肺動脈に流入していた. ARCAPAは心不全で発症する症例が約1割存在し,心筋梗塞や突然死の報告もあることから原則手術介入が行われる.本症例も右冠動脈の大動脈への再移植が行われた.【結語】体重増加不良の経過観察中にARCAPAと診断した女児を経験した.体重増加不良の原因として心疾患の除外は必須であり,診断には心臓超音波検査は有用であった.心精査を行う場合は,常に冠動脈の起始の確認は重要と思われた.