[II-P4-7-10] 生後1カ月で発症したが、抗心不全治療によって改善し、3歳時に冠動脈再建を施行された左冠動脈肺動脈起始(ALCAPA)
キーワード:ALCAPA, 側副血行路, 冠動脈再建
【緒言】ALCAPAは生後2~3カ月に左室心筋虚血による心不全症状で発症する乳児型、無症状で学童成人期に達する成人型に大別される。乳児型では適切な治療を受けなければ90%が1年以内に死亡するとされる。今回、生後1カ月にショックで発症したが抗心不全治療により改善し、2歳になってALCAPAと診断された症例を経験した。【症例】3歳女児。在胎38週、体重2680g、仮死なく出生した。生後1カ月に循環不全、呼吸不全を呈して受診した。著明な心拡大、収縮障害、MRを認めたがALCAPAは否定的と判断され、カテコラミン投与と抗心不全治療により、軽度の左室拡張と中等度のMR残存に改善し、乳児拡張型心筋症としてフォローされた。2歳時の心エコーで冠動脈拡張と類洞交通を疑わせる心筋内血流を認め、冠動脈造影では右冠動脈から側副血行路を介して左冠動脈、肺動脈が造影され、ALCAPAと診断された。3歳時、左冠動脈再建術が施行され、術後の冠動脈造影ではLCAの屈曲や狭窄は認めず、RCAからの側副血行は消失していた。MRは残存したが左室径は正常化し、今後は心不全治療を漸減する予定である。【考察】乳児型のALCAPAは生後の肺動脈圧と酸素分圧低下による左冠動脈灌流の障害と盗血現象によって心筋虚血を引き起こす。一方、側副血行路が発達した症例では、乳児期に無症状で経過することがある。ALCAPAは乳児期早期に心不全を来す鑑別疾患として重要であるが、時として診断が困難である。本症例では当初ALCAPAの診断に至らず抗心不全治療を先行させたが、側副血行路の発達により心機能が改善したと考えられた。側副血行路の発達した症例でも突然死のリスクがあり、冠動脈再建は必要と考える。