[II-P4-8-01] 告知を契機とした多職種による包括的な緩和ケアへの移行―総動脈管症の14歳女児の最期―
キーワード:緩和医療, 先天性心疾患, 告知
【背景】循環器疾患における緩和医療の特徴として、病状が寛解・増悪を繰り返しながら進行する事による緩和導入のタイミングの逸脱や、告知時期の遅延が生じている。また、若年成人では本人の疾病に対する理解度が低く、告知の時期・内容の決定は難しく、世界的にも未だ不十分な導入に留まっている。【症例】14歳女児。総動脈管症、完全型房室中隔欠損症、総肺静脈還流異常症、総動脈管弁狭窄症の診断で、生後3か月時に総動脈管弁置換術、生後6か月時に両側両方向性グレン手術を施行した。徐々に肺静脈閉塞が進行し、手術及びステント留置を複数回施行するも増悪の一途を辿った。その後、側副血行路の発達によるチアノーゼの進行、患者―人工弁ミスマッチによる心不全の増悪を認めた。手術リスクも高く、家族と相談し12歳時にDNRの方針となった。患児はある程度の病状の理解はあった。14歳時に心不全増悪で入院、入院3日目に家族に終末期のICを行い、緩和ケアチームを介入し疼痛管理等を行った。入院16日目に初めて本人へ終末期のICを行い、何度か涙するも最後まで受け止める事ができた。在宅も考慮したが、本人・家族の意志で病棟での緩和医療を継続し、いつもの日常を送る事を希望された。入院30日目に心理士との会話で「家族の気持ちを直接聞きたい」と希望あり、夜間にお互いの気持ちを確認し合う事ができた。翌日、家族が揃った状態で本人の意思でトイレ移乗し、急変。蘇生処置は行わず、ご家族・医療スタッフに囲まれる形で最期を迎えた。【結語】死の近い場面で多職種の協力の元、本人への告知を行う事で自分の残された時間に向き合い、はっきりとした意思表示ができる様になった。それにより、本人・家族の意志を尊重した終末期ケアを行う事ができたが、ICの時期が適切であったとは言えない。本人への告知時期や家族支援等に関して、より穏やかな最期を迎える準備を多職種で考える必要がある。