第58回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

ポスター発表

多領域

ポスター発表(II-P4-8)
多領域 II

2022年7月22日(金) 15:30 〜 16:30 ポスター会場

座長:中島 弘道(千葉県こども病院 循環器内科)
座長:水野 芳子(東京情報大学 看護学部)

[II-P4-8-02] 先天性心疾患患者の移行支援に用いた「しんぞう手帳」の患者と家族の活用の実態調査

岩田 奈津希, 黒田 光恵 (自治医科大学 とちぎ子ども医療センター外来)

キーワード:しんぞう手帳, 移行支援, 自己管理

【背景と目的】先天性心疾患患者の家族は過保護になりやすく、管理が両親主体となることで患者の自立が困難となると言われている。当外来では、疾患の理解や自己管理を促すためのツールとして「しんぞう手帳」(以下、手帳とする)を活用し、2016年から2020年で約300名の家族に頒布した。目的は手帳の活用と疾患の理解や自己管理について実態を明らかにすることである。
【対象と方法】対象は2021年2月~8月に外来受診した患者のうち手帳を頒布した乳幼児から高校生までの全患者の家族101人と、中高校生の患者30人。来院時にアンケートを配布した。質問項目は手帳の活用状況と「先天性心疾患患者に対する移行期チェックリスト」に沿った自立度とした。分析は記述統計、自由記載は内容分析をした。
【結果】回収率は100%、有効回答は患者30人、家族100人。手帳を記入している家族は64人(64%)、患者は14人(46%)であった。記入箇所は多い順に「表紙」「本人の状況」「検査・治療病歴」であり、手帳が役立つことは「病名」「治療経過」「災害時の対応」「入院・退院の経過」が分かるであった。一方で、手帳を記入しない理由は、患者と家族共に「記入する内容や記入の仕方が分からない」が多かった。病名は中高生の約8割が「分かる」と回答し、家族の約9割が患者は分っていると認識していた。感染性心内膜炎については「分かる」は患者0人、患者が分っていると認識している家族は5人で理解が低かった。中高生の手帳の記入の有無と移行期チェックリスト項目の自立度は有意差がなかったが、手術名は記入有りの方が「分かる」が多かった(P<0.02)。家族の意見では「患者に説明しやすい、保育園や学校に伝えやすい、医療者から患者に手帳の記載を促してほしい」等があった。
【考察】手帳は疾患の理解や説明に有用であることが示唆された。手帳を活用しながら感染性心内膜炎の予防の重要性や自己管理の指導が必要である。