[II-P5-2-05] 三尖弁位人工弁機能不全を契機に蛋白漏出性胃腸症を発症し再弁置換術及び心臓再同期療法を施行した心筋緻密化障害の1例
Keywords:蛋白漏出性胃腸症, 心臓再同期療法, 人工弁機能不全
【症例】三尖弁位人工弁機能不全を契機に蛋白量出性胃腸症を発症した心室中隔欠損症、両房室弁置換術後、ペースメーカー植込み術後、心筋緻密化障害を伴う慢性心不全の1例を経験した。症例は13歳女児。生後心雑音から心室中隔欠損症と診断した。生後1ヶ月時に肺動脈絞扼術、1歳時に心内修復術を施行し、その際、房室ブロックとなりペースメーカーを留置して退院した。外来経過観察中に心筋緻密化障害に伴う心機能低下の進行、それに伴う僧帽弁逆流、三尖弁逆流の増悪を認め、2歳時に三尖弁形成術、8歳時に三尖弁(ATS 22mm)及び僧帽弁(ATS 18mm)に対し人工弁置換術を施行した。以後、抗心不全療法を行いながら外来管理としていた。13歳時に新型コロナウイルス感染症の流行により当院受診を遠方のため控えていた際に、顔面の浮腫、腹痛、下痢などの症状、低蛋白血症を発症した。入院精査とし消化管シンチにより蛋白漏出性胃腸症と診断した。また弁透視にてATS弁の一葉がstuckしていたことに加え、心エコーおよび心筋血流シンチグラフィーで著明な心室同期不全が認められた。左心室駆出率は39%、右心室駆出率は27%であった。これらの結果から手術適応と判断し、三尖弁再置換(On-X27)に加えて左室心筋リードを追加し心室再同期療法を施行した。術中所見では機械弁に血栓の付着を認めた。術後経過は良好で、腹痛などの消化器症状や、低蛋白血症は改善しPOD15に退院した。また心室の同期不全は残存しているものの術前より改善し、心機能も左室駆出率は45%、右室駆出率は42%まで改善が得られた。現在外来で経過観察中であるがステロイド中止後も蛋白漏出性胃腸症の再燃は認めていない。【結語】術後蛋白漏出性胃腸症は寛解を維持しており心機能も改善を認めた。再弁置換と同時に行った心臓再同期療法が心筋緻密化障害を伴う慢性心不全に対して効果的であったと考えられた。