[II-P5-2-06] ミドドリン塩酸塩が奏功した難治性乳び胸水の乳児例
キーワード:胸水, ミドドリン塩酸塩, 術後合併症
【背景】先天性心疾患に対する術後の難治性乳び胸水は、低栄養、易感染性などから時に致死的となる。治療には絶食、ステロイド、オクトレオチドなどの保存療法や胸膜癒着術、近年ではリンパ管に対する直接介入などの方法があるが、種々の治療を併用しても治療が困難な症例もある。近年、ミドドリン塩酸塩による難治性胸水や腹水、Fontan術後の蛋白漏出性胃腸症など、リンパ管障害に対する有用性の報告が散見されている。今回、ミドドリン塩酸塩が有効だった難治性乳び胸水の乳児例を経験したので報告する。【症例】在胎38週5日、体重1706gで出生した22番染色体モザイクトリソミーの男児。胎児期より心疾患、胎児発育不全を指摘され、生後に同染色体異常および大動脈縮窄、心室中隔欠損、左上大静脈遺残と診断された。低体重のため二期的修復術の方針とされ、日齢8に両側肺動脈絞扼術施行。日齢49に体重2798gで大動脈弓再建術、心室中隔欠損閉鎖術が施行された。術後胸水に対して絶食、中心静脈栄養、利尿薬、ステロイド、オクトレオチド等で治療され、改善はするものの経腸栄養再開により胸水貯留を繰り返した。経過中、両側上大静脈閉塞が判明し、胸水貯留に関与していると考えられたが介入は困難で、側副血管の増生による改善に期待して保存的治療を継続した。胸膜癒着術でも改善なかったが、日齢189よりミドドリン塩酸塩(0.1mg/kg/day)を開始したところ、胸水は減少し経腸栄養も進めることができた。点滴を離脱し普通ミルクによる栄養でも胸水再燃なく、日齢389に体重2594gで退院した。ミドドリン塩酸塩に伴う血圧上昇や頻脈などの副作用はなかった。【考察・結語】ミドドリン塩酸塩は選択的α1受容体刺激によりリンパ管のα受容体に作用して収縮を促し、リンパ管灌流障害に対する効果が期待されている。副作用の報告も少なく、比較的低侵襲で導入可能であり、難治性胸水に対して考慮する価値のある治療である。