[II-P5-2-07] タンパク漏出性胃腸症に対する肝内リンパ管塞栓術後に著明な腹水貯留を認めた無脾症候群の一例
キーワード:タンパク漏出性胃腸症, 腹水貯留, 肝内リンパ管塞栓術
【はじめに】近年、肝内リンパ管塞栓術は心疾患に合併したタンパク漏出性胃腸症(PLE)に対する治療法の一つとして注目されている。合併症として消化管出血があるが、重篤な合併症は報告されていない。今回、我々は肝内リンパ管塞栓術後に著明な腹水貯留をきたし、一時的に集中治療を要した症例を経験したため報告する。【症例】13歳の女児。無脾症候群、単心室、肺動脈狭窄、総肺静脈還流異常と診断し、日齢19に総肺静脈還流異常修復術、1歳4か月時に体肺シャント術、1歳10か月時に両方向性グレン手術を施行したが、高度の房室弁逆流を認め、フォンタン手術は困難な状態だった。6歳2か月時に共通房室弁置換、6歳3か月時に完全房室ブロックに対してペースメーカー植え込み術が施行された。8歳時に血清アルブミン低下からPLEと診断し、その後は入退院を繰り返した。12歳ごろからアルブミン値のさらなる低下に伴い入院回数が増加したため、肝内リンパ管塞栓術を行う方針となった。【肝内リンパ管塞栓術】全身麻酔下、上部消化管内視鏡下に手技を開始、エコーガイド下に23GのCHBAニードルで肝内リンパ管穿刺した。インジゴブルーを注入し、十二指腸粘膜が染色されることを確認し、リピオドールとNBCAの混合液を注入し塞栓を行った。【術後経過】治療翌日からCRPの上昇、尿量減少と浮腫の増悪を認めたためフロセミド静注、抗菌薬投与を行なったが改善を認めなかった。徐々に全身浮腫は増悪し、術後4日目には腹水著明となり血圧低下、呼吸不全を認めたため、気管挿管のうえ人工呼吸器管理となった。腹水ドレナージを行い、強心剤による治療を行ったところ、徐々に全身の浮腫は改善傾向となり、術後9日目に人工呼吸器から離脱、術後15日目に退院となった。【まとめ】PLEに対する肝内リンパ管塞栓術は比較的安全な手技だが、中には術後に浮腫や腹水貯留により全身状態の悪化を来す症例があることを認識することが肝要である。