[II-P5-3-06] 川崎病性巨大冠動脈瘤症例の妊娠・出産をどのように管理するか
キーワード:川崎病性巨大冠動脈瘤, Warfarin, 妊娠・出産
【背景】巨大冠動脈瘤を伴う川崎病症例に対してwarfarinの使用が推奨されている。しかし、warfarinには催奇形性があるため、妊婦への投与は禁忌である。Warfarinを使用しない妊娠・出産管理を実施した川崎病性巨大冠動脈瘤の2症例について発表する。【症例1】32歳女性。6歳時に川崎病に罹患し左右冠動脈に複数の瘤形成を認めた。Warfarinを開始、aspirinを継続して経過観察されていた。8歳時に右冠動脈の閉塞が確認されたが、11歳時には再疎通していた。左冠動脈には最大径9.6mmの巨大瘤を認めていた。30歳時に妊娠・出産を希望したため、心臓MRI、運動負荷心電図、心筋シンチグラフィーを施行した。MRIで右冠動脈領域にわずかな心筋虚血所見を認めたが、妊娠は可能であると判断した。Warfarinを中止して3か月の経過観察で虚血症状・所見がないことを確認した後に妊娠が成立した。妊娠20週からヘパリン在宅自己注射療法(5,000単位/回、12時間ごと)を開始した。妊娠36週から入院し、ヘパリン皮下注をヘパリン持続静注に変更、アスピリンを中止した。妊娠37週3日に無痛分娩で合併症なく出産した。【症例2】36歳女性。9歳時に川崎病に罹患し、第6病日に左右冠動脈に最大径8.3mmの巨大冠動脈瘤形成を認めた。Warfarinとdipyridamoleを開始、aspirinを継続して経過観察されていた。冠動脈造影、冠動脈CT、心筋シンチグラフィー、運動負荷心電図で冠動脈狭窄や心筋虚血の所見を認めていなかった。36歳時に妊娠が判明し、warfarinを中止した。Aspirinとdipyridamoleは継続とした。妊娠20週にヘパリン在宅自己注射療法(5,000単位/回、12時間ごと)を開始し、順調に経過している。【考察】巨大冠動脈瘤を伴う川崎病患者の安全な妊娠・出産について、産科医、循環器医と相談し、慎重に管理することが重要である。