[II-P5-3-09] 免疫グロブリン静注不応予測例における初期治療法および冠動脈病変発症に関する検討
キーワード:川崎病, 冠動脈病変, 免疫グロブリン静注
【背景】川崎病における免疫グロブリン静注 (IVIG)不応予測例に対する初期治療法は統一されていない。近年IVIG不応予測例において初期からプレドニゾロン(PSL)あるいはシクロスポリン(CsA)などの免疫抑制薬を併用することで冠動脈病変(CAL)合併率を低下させることが報告され、ガイドラインでも推奨されている。一方、山口県で実施したコホートスタディでは、PSL使用例でCAL合併率が増加した。本結果に基づき当院ではこれまで基本的にIVIGおよびアスピリン内服による急性期治療を行ってきた。しかし近年のガイドライン改訂内容を踏まえ、今回私たちは当院における治療方針の妥当性を再検討した。【方法】 2015年1月~2021年12月に山口大学医学部附属病院小児科において川崎病と診断し入院加療を行った症例のうち、群馬スコア5点以上のIVIG不応予測例の臨床的特徴を後方視的に検討した。またCAL合併率を既報(RAISE studyおよびKAICA trial)と比較検討した。【結果】全川崎病入院174名のうち、54名 (31.0%)がIVIG不応予測症例であった。そのうち入院時すでにCALを合併していた7名を除外し、最終的に47名 (27.0%)で検討を行った。男児35名 (64.8%)、月齢29 (1-173)か月、初回IVIG不応24名 (51.0%)であった。3rd line以降の治療として7名 (14.9%)にインフリキシマブが投与され、1例(2.1%)に血漿交換が行われた。発症1か月以内のCAL 5名 (10.6%)であった。発症1か月の時点でCALが残存していた症例は2名 (4.3%)であり、RAISE studyにおけるPSL併用群(3.3%)およびKAICA trialにおけるCsA併用群(2.3%)と比し有意差は認めなかったが、合併率はわずかに高値であった (p=0.77およびp=0.60)。【考察】当院での発症1か月時点でのCAL合併率は既報と比し、有意差は認めないが、わずかに劣る結果であった。そのため、CAL合併率をさらに減少させるために今後は当院においても初期治療方法に関して更なる検討が必要と考えた。