[II-P5-4-02] ホスホジエステラーゼ‐5阻害薬が奏功した重症肺高血圧を呈した脚気心の1男児例
キーワード:脚気心, 肺動脈性肺高血圧, PDE5阻害薬
緒言】脚気心は心不全、肺高血圧を合併し急速に循環不全に至ることがある。近年国内では稀な疾患であるが、小児期においてスポーツ飲料大量摂取や精神発達遅延による偏食・摂食障害が原因で発症する例が報告されており注意を要する。【症例】3歳5か月の男児。2歳2か月時に体重増加不良、経口摂取不良で当科入院精査の結果、回避・制限性食物摂取症と診断され栄養指導を含め外来で経過観察を行っていた。1か月前から口内炎をきっかけに白米、豆腐しか食べなくなり、2日前から経口摂取低下、活気低下、顔色不良があるため入院した。心拍数160bpm、呼吸数 60 bpm、SpO2 92%、血圧78/40mmHg。胸部X線で肺野に異常なく、CTR 49%。心エコー検査で右室・右房拡大、心室中隔の左室側への圧排あり。中等度の三尖弁逆流(TR)を認め、最大血流速度(Vmax)は4.3m/sec。重度の肺動脈性肺高血圧(PAH)を疑いHFNCによる酸素投与下にSildenafil投与(1mg /kg)を行ったところ1時間後の心エコーでTRは軽度となりVmax も2.9m/secと著名に改善した。既往歴からビタミンB1(VB1)欠乏による脚気心に伴うPAHの可能性も考えチアミン投与を開始した。特発性PAHは否定できないため入院翌日からTadalafil(1mg /kg/日)を開始した。造影CT検査で肺動脈・肺静脈の狭窄、閉塞所見はなく、血液検査で膠原病を示唆する所見はなかった。入院時のVB1は16ng/ml(20~50)と低下していた。入院治療開始後経口摂取量は増加し、心エコー上PAH所見は消失したため入院19日目に退院した。Tadalafilを減量中止し、発症8か月後に心臓カテーテル検査を施行、平均肺動脈圧:22 mmHg、 肺血管抵抗:3.1Units/m2と重度のPAHは見られなかった。【結語】摂食障害や偏食のある患児の体調の変化時には脚気心による心不全や肺高血圧を念頭に早期の心エコー検査による評価と病状に応じた治療介入とビタミン補充が重要である。