[II-P5-4-03] IgG4関連疾患を合併した遺伝性肺動脈性肺高血圧症の1例
キーワード:遺伝性肺動脈性肺高血圧症, IgG4関連疾患, BMPR2遺伝子
【背景】IgG4関連疾患(IgG4RD)は、約10万人に3人の有病率で、IgG4陽性の形質細胞の浸潤により全身の様々な部位で多彩な症状を呈する。自己免疫の関与や肺病変を呈し、IgG4RDと肺高血圧症の合併は少数であるが報告されている。今回、遺伝性肺動脈性肺高血圧症(HPAH)の治療中にIgG4RDを発症した症例を経験し報告する。【症例】25歳女性。兄がBMPR2遺伝子変異のHPAHで心不全死しており、母もPAHを発症し治療中。8歳時にPAHと診断され、治療開始2年目からepoprostenol持続静注を含めた3剤併用療法で治療している。心臓カテーテル検査では、肺動脈圧66 mmHg、PA/Ao 1.0、CI 2.3 L/min/m2、PVRI 21.4 Wood units/ m2であり、徐々に肺循環動態は増悪傾向を示していた。治療開始17年目に、眼瞼と顎下腺の腫脹を認め、ミクリッツ病が疑われた。胸腹部単純CTで頚部・顎下・腸間膜・縦隔のリンパ節腫大、気管支血管束の肥厚・すりガラス影・小結節影、膵体尾部の腫大と血液検査で高IgG4 血症(404 mg/dl)を認めた。眼瞼組織の病理ではリンパ球と形質細胞の浸潤を認め、IgG4/IgG陽性細胞比が40%以上であったことから、IgG4RDと診断された。ステロイド治療に反応し、血清IgG4値の低下、涙腺・顎下腺の縮小を認めたが、全身のリンパ節腫大と肺病変の改善はなく、ミコフェノール酸モフェチルによる治療が行われている。IgG4RDの治療開始後、収縮期肺動脈圧は70 mmHg前後、三尖弁輪収縮期最大移動速度は低値であり、BNP値も100 pg/ml台で推移しているが、治療前に比して明らかな増悪はなかった。【結語】HPAHの治療中にIgG4RDを発症した症例を経験した。短期的にはIgG4RD発症後に肺循環動態の増悪はなかった。IgG4RDとHPAHにおける関与は明らかではないが、共に希少疾患であり何らかの関連性があることが予想される。