[II-P5-4-05] 先天性門脈体循環短絡(CPSS: congenital portosystemic shunt)により治療抵抗性の門脈肺高血圧症(PoPH: portopulmonary hypertension)を呈した2例
キーワード:肺高血圧, 門脈体循環短絡, 肺血管拡張薬
【背景】先天性門脈体循環短絡症(CPSS, congenital portosystemic shunt)の合併症として、門脈肺高血圧症 (PoPH, portopulmonary hypertension)は重要であるが、エビデンスの確立した治療はない。【症例1】15歳男性。13歳時に学校心臓検診を契機に肺高血圧症と診断。胆汁酸、アンモニアの上昇と造影CTで肝外門脈体循環短絡(脾静脈-左腎静脈)を認めPoPHと診断した。閉塞試験で門脈圧上昇はなく、Amplatzer vascular plug IIによる経皮的塞栓術を施行。肺血管拡張薬を漸次追加し3剤併用としたが、15歳時の肺高血圧の急性増悪を契機にPGI2持続静注療法を導入した。導入後4か月で改善はない。【症例2】14歳女性。新生児期の高ガラクトース血症を契機に門脈欠損、多脾症候群、心房中隔欠損症と診断した。1歳時にチアノーゼを認め、肝外門脈体循環短絡(脾静脈-下大静脈)、肺高血圧症と診断した。肺生検で肺小動脈の形成不全を認めたため、肝移植の適応外と判断した。肺血管拡張薬を3剤併したが肺高血圧の改善は認められなかった。14歳時の造影CTとカテーテルによる短絡血管閉塞時の造影で肝内門脈が確認され、閉塞試験で門脈圧上昇なく、外科的結紮術を施行した。PoPHは重症であり、同時にPGI2持続静注療法を導入したが、導入後2年で改善はない。【考察】無症候性のCPSSの約10%にPoPHが認められるとの報告があり、検診で診断される肺高血圧においてもCPSSは重要な鑑別疾患である。門脈欠損と診断された症例にも肝内門脈が確認されるため、繰り返し精査が必要である。しかし、進行したPoPHは治療抵抗性である可能性が報告されている。【結語】CPSSに合併したPoPHの2症例に対して、10歳代で短絡血管閉鎖術とPGI2持続静注療法を導入した。肺高血圧の改善は得られていない。PoPHにおける積極的な精査による早期短絡血管閉鎖や肺血管拡張薬の有効性については今後の検討課題である。