[II-P5-4-06] 松果体芽腫維持療法中に肺動脈性肺高血圧を呈し、薬剤反応性良好であった1例
キーワード:肺動脈性肺高血圧, 2字性肺高血圧, 化学療法
【症例】13歳男児。偶発的に発見された松果体芽腫に対して、腫瘍亜全摘、ブスルファンを含む化学療法、自己末梢血幹細胞輸注、放射線治療を行った。治療開始9か月時、外来でエトポシド内服による維持療法中に、息切れ、全身倦怠感が出現し、心エコーで左室の著しい圧排、TRPG 58mmHgからPHと判断した。カテーテル検査ではFiO2 0.21にてPAP 54mmHg(mean)、PCWP 13mmHg、Rp 14.3Wood unit/m2、Pp/Ps 0.95より、PAHと診断した。PA angiogramでPA末梢は血管床が乏しく、枯れ枝状であった。段階的にPDE5阻害剤、エンドセリン受容体拮抗薬を導入しところ、PAH治療開始1か月後のカテーテル検査ではPAP 17mmHg(mean)、Rp 2.62 Wood unit/m2まで低下した。さらにPAH治療開始1年3か月後にはPAP 15mmHg(mean)、Rp 1.43Wood unit/m2、Pp/Ps 0.20と正常化し、造影でもPAの枯れ枝状の所見は改善した。その後3年間、severeなPAH再燃なく経過している。
【考察】化学療法後のPHの報告は一定数散見される。特にアルキル化剤の1つであるブスルファン投与後にPHを発症した症例は数例報告されている。アルキル化剤を含む化学療法では、病態的にPVODによるPHが多く報告されているものの、化学療法を行っている小児で経過中にPAHを来す症例は決して多くなく、GCN2をコードするEIF2AK4遺伝子等、遺伝的な関与も疑われている。本症例ではiPAHと薬剤による2次性PAHの鑑別は困難であるが、肺血管拡張薬への反応性が良く、短期間でPHが改善した経緯から、薬剤性PAHの可能性が高いと考えている。薬剤性PAHの機序、経過について考察する。
【考察】化学療法後のPHの報告は一定数散見される。特にアルキル化剤の1つであるブスルファン投与後にPHを発症した症例は数例報告されている。アルキル化剤を含む化学療法では、病態的にPVODによるPHが多く報告されているものの、化学療法を行っている小児で経過中にPAHを来す症例は決して多くなく、GCN2をコードするEIF2AK4遺伝子等、遺伝的な関与も疑われている。本症例ではiPAHと薬剤による2次性PAHの鑑別は困難であるが、肺血管拡張薬への反応性が良く、短期間でPHが改善した経緯から、薬剤性PAHの可能性が高いと考えている。薬剤性PAHの機序、経過について考察する。