[II-P5-4-07] 高用量エポプロステノールを含めたupfront combination therapyで治療中のACD/MPVの乳児例
キーワード:Alveolar capillary dysplasia with misalignment of pulmonary veins, upfront combination therapy, エポプロステノール
【背景】Alveolar capillary dysplasia with misalignment of pulmonary veins; ACD/MPVは、肺動脈中膜肥厚、肺毛細血管低形成、肺静脈不整配列などを特徴とする稀な疾患で、時に消化管奇形を合併する。大半が生後早期に重症肺高血圧症で致死的な経過を辿る予後不良な疾患であるが、軽症例や心房間交通がある例では長期生存や肺移植到達の報告もある。【症例】女児。38週0日、2614gで出生。d0に十二指腸閉鎖/腸回転異常根治術を施行。その際低酸素血症はなく、d1の心エコーでRVp<LVpだった。d8にSpO2低下があり、心エコーでTRPG 89mmHgのoversystemic PHと PFOのRLシャントを認めたが、チアノーゼ性心疾患やPV狭窄は否定的であった。酸素、タダラフィルを開始したがPHの改善なく、右心不全状態となったため、人工呼吸器管理、iNO、マシテンタン、セレキシパグ、エポプロステノール(EPO)を導入した。集中治療によりPHは改善傾向となり人工呼吸器を離脱したが、PHが再燃し11日後に人工呼吸器管理、iNOを再開した。Xpで両側肺うっ血を認めPVOD合併も危惧されたが、EPO投与が途絶えると低酸素血症が高度増悪するため積極的に増量する方針とし、60ng/kg/minまで増量した時点でRVp<LVpとなった。現在月齢3で、EPO 98ng/kg/min投与下にiNO 15ppm併用中である。また、FOXF1遺伝子にミスセンス変異(c.316T>C, p.Phe106Leu)を認め、ACD/MPVの診断が確定した。【考察】ACD/MPVのPHにはPVODのメカニズムも一部寄与するため肺血管拡張剤の使用は慎重であるべきだが、本症例は高用量EPOを含めたupfront combination therapyが有効であり、肺うっ血の程度は許容範囲で経過している。【結論】発症早期からの高用量EPOを含めたupfront combination therapyがACD/MPVの短期的な予後改善に有効な可能性がある。中長期的な予後は不明な点が多いが、長期生存には肺移植が必要と考えられる。