[II-P5-4-08] 肺高血圧症と心房頻拍を合併した巨脳症-毛細血管奇形症候群の一例
キーワード:肺高血圧症, 巨脳症-毛細血管奇形症候群, PIK3CA遺伝子変異
【緒言】巨脳症-毛細血管奇形症候群(MCAP)はPI3K/AKT/mTORシグナル伝達系の異常により大頭、毛細血管奇形、左右非対称の過成長、結合組織異常などを認める症候群である。突然死の報告もあり、脳幹圧迫、不整脈、先天性心疾患などの関与が考えられているが、多くは機序が不明である。また、MCAPと肺高血圧症との関連は明らかになっていない。【症例】7か月女児、胎児期からover growthを指摘されており、出生後に大頭や大理石様皮斑、皮膚の過伸展などの臨床所見と脳MRI所見からMCAPと診断した。血液の全エクソン解析でPIK3CA遺伝子の体細胞モザイク変異が同定された。生後2か月より上気道狭窄のため気管切開、人工呼吸器管理となり、その後水頭症のため脳室腹腔シャント術を行った。生後5か月、異所性心房頻拍を発症しジゴキシンの内服を開始した。生後7か月、心拍200-220/分の頻拍と経皮的酸素飽和度88%(室内気)の低酸素血症をきたし、緊急入院となった。心臓超音波検査では著明な右室圧上昇(収縮期血圧84mmHgに対して推定右室圧96mmHg)を認め、肺高血圧症と診断した。肺高血圧症の鑑別のため血液検査、胸部単純CT、肺血流シンチグラム、腹部エコーを施行するも原因を特定できる異常所見を認めず、特発性肺動脈性肺高血圧あるいは肺疾患/低酸素血症による肺高血圧症と診断した。酸素とシルデナフィル投与により推定右室圧60mmHg程度まで改善した。【考察】PI3K/AKT/mTOR経路と肺動脈平滑筋細胞の異常増殖やアポトーシス抵抗性との関連を示唆する報告がある。本症例ではPIK3CA遺伝子の体細胞モザイク変異がみられており、肺高血圧症の発症と関連する可能性がある。【結語】PIK3CA遺伝子異常を伴うMCAP症例では、突然死予防のため、肺高血圧症の合併にも留意する必要がある。