第58回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

ポスター発表

肺循環・肺高血圧・呼吸器疾患

ポスター発表(II-P5-4)
肺循環・肺高血圧・呼吸器疾患 III

2022年7月22日(金) 16:40 〜 17:40 ポスター会場

座長:池田 和幸(京都府立医科大学 小児科)
座長:岩朝 徹(国立循環器病研究センター 小児循環器内科)

[II-P5-4-09] 当院における先天性心疾患に合併した門脈体循環短絡症の検討

稲熊 洸太郎, 豊田 直樹, 石原 温子, 坂崎 尚徳 (兵庫県立尼崎総合医療センター 小児循環器内科)

キーワード:PAH, congenital portosystemic shunt, PoPH

【背景】先天性門脈体循環短絡(CPS)は稀な先天奇形であるが、22%にCHDを伴い、8%に門脈性肺高血圧(PoPH)の合併が報告されている。今回、脾動脈瘤破裂を機に診断されたCPSを伴うASD術後のPH症例の臨床経過を含め、当院におけるCHD合併CPSの自験5例について報告する。【症例】20歳女性、ASDおよびVSD(1歳時に自然閉鎖)、3歳時の心カテーテル検査で平均肺動脈圧(mPAP)54mmHg、PVR 6.9単位のPHを認め、ASD閉鎖術施行。術後mPAP 30mmHgの遺残PHに対してberaprostを内服継続していたが、18歳時にmPAP 39mmHg、PVR 5.5単位とPHの改善なくbosentanへ変更した。20歳時に急性腹症で救急受診され、脾動脈瘤破裂のためコイル塞栓術施行。造影CTでCPSを認め、閉塞試験で有意な門脈圧上昇なくコイル塞栓を行った。治療後はbosentanからmacitentanへ変更するもPVR 9.2単位まで上昇し、現在はiloprost併用にてmPAP 25mmHg、PVR 7.6単位、NYHA1度で経過している。当院におけるCPS自験5例(本症例含む)の合併CHDはASD2例、TOF2例、VSD1例。CPSの診断平均年齢は13.4歳(3-23歳)、全例が肝外CPSで、門脈形態は正常1例、欠損4例である。PH発症は4例、うちPoPHが2例。また2例に肝肺症候群(HPS)の合併を認めた。HPS合併の2例が12、28歳時にそれぞれ脳膿瘍、多臓器不全で死亡している。生存3例のうち1例は肝移植を受けており、1例はCPS未治療でPHなし、現在3例ともNYHA1度で内科治療継続中である。【考察・結語】本症例では、CPSコイル塞栓後のPVR改善が乏しく、ASD術後も長期残存したCPSの影響により肺血管remodelingが進行していたとすると、CPSの早期診断・治療によりremodelingを防げた可能性がある。PHを伴うCHD症例では、造影CTによる全身検索を行い、CPSの早期鑑別が重要と考えられる。