[II-P5-4-10] フォンタン手術術後に薬剤性間質性肺疾患をきたした1症例
Keywords:間質性肺疾患, 肺血管拡張薬, フォンタン手術
概要グレン手術やフォンタン手術の右心バイパス術において、肺血管拡張薬は右心バイパス循環に対して有効性を示す文献が散見される。その一方、肺血管拡張薬による間質性肺疾患が発症した報告もある。フォンタン術後急性期に間質性肺疾患を発症した症例について報告する。症例1才9ヶ月女児、胎児期に左心低形成症候群の診断。在胎38週5日、誘発分娩、体重3172g、Apgar score 8/8で出生。出生後超音波検査で左心低形成症候群と診断。生後2日、両側肺動脈絞扼術施行。生後25日、動脈管ステント留置術施行。生後5ヶ月ノーウッド手術・両方向性グレン手術施行。術後肺血管拡張薬としてPGE5阻害薬(シルデナフィルR)及びエンドセリン受容体拮抗薬(マシテンタンR)を開始。術後概ね順調に経過。1才9ヶ月、導管-心房開窓術を加えた心外導管型フォンタン手術を施行。術後は一酸化窒素吸入療法を開始、シルデナフィルRとマシテンタンR内服を再開。術後2時間で人工呼吸器管理離脱・抜管。術後6日に一酸化窒素吸入療法を中止、術後7日に胸腔ドレーンを抜去。術後9日に緩徐に酸素化低下、白血球数・CRPの増加、ピーク値でKL-6 2780 U/mL, SP-D 660 ng/mLと上昇し、胸部X線写真で肺間質陰影が増強、CTで間質性肺障害と診断、薬剤性の可能性を考慮して肺血管拡張薬を中止、メチルプレドニゾロンによるステロイドパルス及び後療法プレドニゾロンを施行。呼吸状態は改善、フォローアップのC Tで間質陰影改善。術後27日にI CU退室、術後65日に在宅酸素療法導入して自宅退院。考察肺血管拡張薬は肺動脈を選択的に拡張させ、肺静脈閉塞性疾患・肺毛細血管腫症の病態を引き起こす可能性がある。術後侵襲期は病態の見極めが困難となることがあるため,肺血管拡張薬の使用を控え,NO 吸入療法のみで術後急性期治療を行うべきと考えた。