[II-P5-4-11] エポプロステノール持続静注療法から離脱した肺高血圧症を合併したコケイン症候群の1幼児例
キーワード:コケイン症候群, 肺高血圧, エポプロステノール
【背景】コケイン症候群は紫外線性DNA損傷の修復システムの機能低下により発症する常染色体劣性遺伝性の早老症である.典型的な症状として光線過敏症,特有の早老様顔貌,発育・発達遅延,網膜色素変性,感音性難聴など多彩な症状を呈するが,これまで肺高血圧症の報告はなされていない.【症例】6歳女児.発達遅滞などから5歳時にコケイン症候群が疑われ,遺伝子検査にてERCC8遺伝子の異常を認め確定診断に至っていた.入院数日前より微熱,鼻汁などの感冒様症状がみられていたが,軽い咳のみだったため療育施設に登校した.啼泣を契機としてチアノーゼと努力様呼吸,意識レベルの低下を認め当院に救急搬送となった.入院時にチアノーゼ,SpO2 80%の低酸素血症を認めスクリーニングで施行した心臓超音波検査で肺高血圧症が疑われた.心臓カテーテル検査を実施したところ肺動脈平均圧 53 mmHg,Rp 16.9単位と肺高血圧を認め,エポプロステノール負荷試験への反応を認めたことから酸素投与およびエポプロステノールによる治療を開始した.エポプロステノールを半年かけて16 ng/kg/minまで漸増し,その後約1年間の投与を継続した.心臓カテーテル検査で平均肺動脈圧21 mmHg,Rp 2.7単位まで改善していることを確認し経口肺血管拡張薬への移行を行った.経口肺血管拡張薬移行後は平均肺動脈圧25 mmHg,Rp 3.7単位と軽度の悪化を認めたがエポプロステノールの持続静注療法から離脱した状態が1年以上持続しており,明らかな肺高血圧の再燃はみられていない.【考察】コケイン症候群では加齢に伴う心血管イベントの報告はあるが,肺高血圧症の報告は我々が検索した範囲では見つけることはできなかった.肺高血圧症の発症に酸化ストレスや炎症による肺動脈のリモデリングが関与することは知られており,DNA損傷やDNA修復機能障害が肺高血圧症の発症に関与している可能性を示唆する症例と考えられた.