[II-P5-4-12] 慢性的なイオン飲料多量摂取に伴うVitB1欠乏により肺高血圧を来した1歳男児
Keywords:VitB1欠乏, 肺高血圧, イオン飲料
【症例】発育発達は正常の1歳8か月男児。日頃から乳幼児用イオン飲料を1.5L/日程度好んで飲んでいた。入院前日から発熱、多呼吸があり前医へ入院し、肺炎の診断で抗菌薬と補液で治療が開始された。発熱・多呼吸が持続し翌日に当院へ転院した。翌日には解熱したがSpO2が90%前後で推移し酸素投与が必要だった。転院4日目の心エコー検査で収縮期圧60mmHgの肺高血圧と右心系の拡大を認めた。食事を摂らずイオン飲料だけ摂取していたが、食事を少しずつ摂るようになり、SpO2はしだいに上昇し酸素も不要となった。12日目の心臓カテーテル検査での肺動脈圧は26/9 (14) mmHgと正常だった。食事を摂取するようになった以降の測定ではあったが、血中VitB1は2.3μg/dLと低値だった。【考察】VitB1が慢性的に欠乏すると、血管抵抗が低下し、体血流及び肺血流の増加に加え肺血管収縮による肺血管抵抗増加から肺高血圧をきたす機序が考えられている。また、VitB1は貯蔵できず絶食時に短期間で欠乏するが、糖質の多い飲料の多量摂取や糖質補液により欠乏が助長されやすい。VitB1欠乏は発達障害児の著明な偏食で見られることがほとんどであるが、本児は偏食はなかったものの、イオン飲料の多量摂取で慢性的にVitB1欠乏ぎみの状態だったことが考えられる。そこに、感染や輸液の糖負荷によるVitB1需要の増加からVitB1欠乏をきたし肺高血圧を呈したものと考えられた。【結語】VitB1欠乏では肺高血圧をきたすことがあり、小児の感染症罹患時等に、経口摂取不良やイオン飲料の多量摂取などがある場合には注意を要する。