[II-P5-5-02] 胎児期発症の心筋梗塞として管理していたが, 剖検で心筋症と診断した一例
Keywords:胎児期発症心筋症, 胎児期発症心筋梗塞, lamin A/C遺伝子関連心筋症
【背景】 胎児期に心筋梗塞を発症することは極めて稀であり, その多くは先天性心疾患(特に冠動脈起始異常)に合併すると言われている。一方で, 心筋症は家族性のものや移行抗体によるものなどが知られている。今回, 在胎36週に急激な左心不全を認め, 胎児期発症の心筋梗塞を疑ったが剖検で心筋症と診断した一例を報告する。【症例】 姉の軽度肺動脈弁狭窄以外に, 特筆すべき家族歴はない。在胎36週の定期検診にて胎児心拡大および心収縮不良を認め, 緊急帝王切開で出生。出生体重3220g, Apgar score 8点/8点。徐々に呼吸状態の悪化, 皮膚色不良を認めたため生後43分で挿管管理とした。心電図ではV3-6誘導すべてでQSパターンであり, 超音波検査では左室自由壁および乳頭筋が高輝度となっており, 胎児期発症の広範な心筋梗塞が疑われた。明らかな器質的異常は認めなかったが著明な左室拡大・収縮不良を認め, 僧帽弁閉鎖不全は重度であった。下半身の血流は動脈管依存で, プロスタグランジン製剤により循環を維持したが, 重症肺高血圧により頻回に肺高血圧クリーゼを起こし, 一酸化窒素吸入も要した。日齢10には循環動態は安定したため経腸栄養を進めたが, 日齢25に血性嘔吐(剖検で腸重積と判明)もあり経腸栄養は進められず, その後胆汁うっ滞性の肝障害, 黄疸の進行を認めた。その後, 左室機能の改善はなく, 日齢89に永眠された。【剖検】 左室自由壁全体に中輪状筋層の脱落・線維化を認め, 虚血を疑わせる所見は一部のみであり心筋梗塞が主病態とは考えにくかった。病理所見はlamin A/C遺伝子関連心筋症に類似しており, 心筋症関連の174遺伝子の次世代シークエンス検査を提出した。【考察】 胎児期発症の急性左心不全に対して, 胎児期と同様の血行動態を維持することで3ヶ月生存し得た症例を経験した。同様の症例に対する剖検報告は少なく, 今回解剖および遺伝子検査結果をまとめて提示する。