[II-P5-5-03] 心臓MRIのT1 mappingを加えることで心筋性状評価が可能となった心筋疾患の3症例 -遅延造影だけでは見落とす可能性がある-
キーワード:T1 mapping, 心筋症, 心臓MRI
心筋性状評価における心臓MRI検査(cMRI)のガドリニウム遅延造影(LGE)の有用性は広く認知されているが正常心筋が無信号に描出されるように条件設定をして撮像するため、左室全体に障害が生じたびまん性病変の評価は困難となる。T1 mapping(T1M)はLGEでの検出が困難となりがちなびまん性の組織病変を客観的・定量的に評価できる。我々はLGEにT1Mを加えることで心筋性状評価が可能となった心筋疾患3症例を経験した。【機器・方法】使用機器Philips Ingenia Elition 3.0T, Canon vantage GALANTM 3T。LGEはガドビスト(Gd-BTDO3A)0.1ml/kgを静脈注射した5分後にPSIR法を使用して撮像した。T1MはMOLLI法を使用して撮像した。【症例】症例1:23歳男性LEOPARD症候群に伴う肥大型心筋症(HCM)。14歳のときに施行したcMRIのLGEで心基部中隔側、心尖部に斑状の陽性所見を確認。造影される範囲は小さく心筋障害の程度は軽度と判断していた。19歳で施行したcMRIのLGEでも同様の所見を認めたが、T1Mでは左室全体のNative T1値が1200~1300msまで延長しており左室のびまん性の心筋障害が生じていることが判明した。症例2:16歳男性HCM。12歳で施行したcMRIでのLGEは陰性であったが、T1Mで肥大を認める中隔を中心としたNative T1値の延長(Native T1値1200ms)を認めた。同部位の細胞外容積も高値であり左室心筋にびまん性の心筋障害が存在すると判断した。症例3:25歳男性Fabry病。21歳のときに施行したcMRIのLGEでは明らかな陽性所見を認めなかったがNative T1値は中隔側で800~850msと短縮しており脂肪沈着と考えられた。同部位のNative T1値は酵素補充療法の開始後正常化した。【結語】3症例ともLGEのみでは心筋障害の程度を評価するのは困難で、T1Mを併用することで評価可能となった。LEは心筋性状評価に有用であるが、限界があることを留意して判定する必要がある。