[II-P5-5-04] 病理所見からリウマチ性弁膜症を診断し得た一例
Keywords:リウマチ性心疾患, Aschoff小体, 僧帽弁閉鎖不全
【背景】リウマチ性心疾患(RHD)はA群β溶血連鎖球菌(GAS)の反復感染により進行するため、急性リウマチ熱(ARF)の早期診断と感染予防が必要である。GAS未指摘のRHDで弁膜症の急性増悪例を経験した。【症例】9歳女児【主訴】呼吸困難【既往歴】GAS感染既往なし。発症3か月前の学校内科検診で心雑音を指摘され僧帽弁閉鎖不全(MR)と診断された。【経過】咳嗽が遷延し、稽留熱の第10病日に前医で気管支炎と診断された。第13病日に起坐呼吸が出現し、胸部単純X線でCTR60%の心拡大、心臓超音波検査で左室、左房の拡大、MRの増悪を認めた。僧帽弁前尖は弁尖が肥厚し過剰に動き、逸脱がみられた。急性心不全を疑われ第14病日に当院へ転院。血液検査では白血球、CRP、心筋逸脱酵素、抗ストレプトリジンO抗体、抗ストレプトキナーゼ抗体の上昇なくGAS迅速検査、血液培養ともに陰性であった。安静時心電図にPR間隔の延長は認めなかった。利尿薬で軽快したが、重度MRが残存したため第28病日に人工腱索を用いた僧帽弁形成術、弁輪縫縮術を施行した。術中所見では肥大した乳頭筋が僧帽弁前尖を左房側に圧排していた。切除した左心耳病理標本からAschoff小体を認め、心臓超音波検査での診断基準も満たしRHDと診断した。本症例はGAS感染を指摘されずに発症したRHDであるが、Aschoff小体の形態からARFは3-4か月前の発症と推測され、今回は感冒のためMRが急性増悪したと考えられた。術後MRは軽度で左室流入血平均圧較差は約3mmHgである。また、二次予防のためにペニシリンVの内服を開始した。【結論】弁膜症と診断される小児にはARF未指摘のRHDが存在し、GAS再感染による悪化が危惧される。現在本邦では小児のRHDは稀となったが、依然として弁膜症の重要な鑑別疾患であり、GASとRHDを正しく診断する必要がある。