[II-P5-5-05] 心室細動を起こした男児を契機に診断されたRBM20遺伝子異常による家族性拡張型心筋症の一家系
キーワード:拡張型心筋症, RBM20, 心室細動
【背景】拡張型心筋症(以下、DCM)において30-40%に家族性があり、50以上の原因遺伝子が報告されている。そのうち、RNA binding motif protein 20(以下RBM 20)が2-3%を占める。【症例】発端者は生来健康な11歳男児。徒競走時に心肺停止となり、bystander CPRが行われ,3分以内にAEDが1回作動し心拍が再開した。AEDには心室細動が記録されていた。左室軽度拡大、軽度心機能低下のみであったが、母、母方祖父、母方大叔母に拡張型心筋症を認め、家系内に多数の突然死症例があったため、家族性拡張型心筋症が疑われた。また、心筋生検では空胞変性、間質、心筋細胞の繊維化を認め、拡張型心筋症の所見が得られた。一次予防のためS-ICD+AAI植込みを行い、β遮断薬、ACE阻害薬の内服を開始した。現在もSICDの作動なく軽度心機能低下のみで状態は保たれている。遺伝学的検査にてRBM20遺伝子のミスセンス変異(c.1912C>G,p.P638A)を認め、母方大叔母においても同部位の遺伝子変異が認められた。【考察】RBM20遺伝子はスプライシング制御因子をコードする遺伝子でDCMの原因遺伝子の一つであり、変異によりサルコメアタンパク質であるTitinの発現異常が起こる。RBM20遺伝子異常により心室拡張径の拡大が起こり、DCM様の形態変化が報告されており本症例においても左室拡張径の拡大が認められ同遺伝子異常による影響が示唆された。。また、RBM20遺伝子異常では不整脈の頻度が多い。母も心室細動を契機にDCMと診断されている。加えてDCMと診断されていない心室性不整脈が疑われる突然死症例が多数認められたおり、これまでの報告同様致死的不整脈の合併が多い可能性が示唆された。本症例は症状なく心機能の低下は軽度であったが心室細動を認めており、RBM20遺伝子変異と診断された場合はICDの二次的予防植込みを含めた早期からの治療介入が求められる。【結語】RBM20遺伝学的検査はDCMにおける治療方針の決定に有用である。